Home>2012年02月  TotalPages1

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

●回りくどいハナシ、の「くどい」トコだけを書き連ねる日々。

2012.02.21 Tue

▼前置き:

 そのな、「『総天然色AKIRA』ってさぁ~」で始まる、適当なエントリを書こうとしたさ。

 したらな、書いてる途中で「このエントリを読んでいる人間のどれほどが『総天然色AKIRA』をご存じなのか?」という疑問がフト頭に浮かんでな。

 なので、該当書籍の「成り立ち」から語ってみることにしてみたさ。


 ……が、2012年現在だと、そもそも大友克洋・作の『AKIRA』というマンガ作品があって、これが当時とても凄い作品だった、という所から話すべきなのだろうか、という疑問も浮かんでな。

 その、『AKIRA』といえば、「おれらの世代」にとっては重要な作品ではあるけれども、それは、『AKIRA』が連載中から読んでた、「いい歳した世代」にとっての話であって、も少し下の世代、いうなれば物心付いた頃には『AKIRA』が完結してて、単行本も出てた世代にとっては、空気感が違うだろな、と。

 そもそも『AKIRA』の連載開始ってば、今から30年も前(1982年)で、雑誌での連載が完結したのが22年前(1990年)。でもって単行本の最終巻(描き直し多数で雑誌での完結からずいぶん後に出た)にしても、1993年と、もはや20年近く前であり、すなわち「古典」といっても差し支えない作品になってるじゃないですか。実に。


 な、わけで、今回は、「『総天然色AKIRA』について、適当に語るエントリ」を書く前に、「『総天然色AKIRA』の成立について、オリジナルの『AKIRA』から、それなりにきちんと語るエントリ」にしたく思った。

 ……問題は、これできちんと説明した次の、「『総天然色AKIRA』について、適当に語るエントリ」が、あんまり面白くない事実の指摘になる、というソレですが(知らん)。


▼『総天然色AKIRA』の成り立ちについて:

 そんなわけで、表題について、書く。

 まず、すごく大雑把にいうと、大友克洋というマンガ家がいて、この人は1970年代末あたりから注目を浴びてて、1970年代末からのマンガ界の「ニューウェーブ」運動(あったんだよ、そういう微妙な名前のムーブメントが)の筆頭作家となっていたのですわ。

 こう、マンガ評論家の米澤嘉博が、大友の作風をして「非手塚的手法」と表したとか、当時のマンガ表現のレベルが大友以降大きく変化したとか――解りやすい例でいえば、「超能力をぶつけられた人物が壁に叩きつけられたら、壁が球形にへこむ」「あふれ出た超能力で地割れが走って岩塊が宙に浮き上がる」とかいう表現を発明したのは大友で、その他にも大小様々な表現の発明をしてて、当時のマンガ家とアニメーターがこぞってパクった――とか書くと、なんとなく「当時において革新的な作家だった」ことは伝わるでしょうか。

 で、大友はその頃は双葉社の「漫画アクション」「アクションデラックス」あたりのマイナー誌で作品を発表してたんだけど、1982年に、メジャー中のメジャーである講談社の「ヤングマガジン」(当時は隔週刊、連載中に週刊化)で、連載を開始するわけだ。これが、『AKIRA』な。

 未読の読者のために『AKIRA』がどんな作品だったかを語ると、より一層長くなるので、まぁ各自調べてください(投げた)。ネットで検索すれば、多分熱く語ってるサイトとか見つかるだろうし。


 でー、アメリカン・コミックス的に、『AKIRA』が凄かった事例としては、1980年代後半の米語訳マンガの黎明期に、いち早く『AKIRA』が翻訳されていた、という一事を挙げてみるのですが。

 その当時(1988年)は、初の米語訳マンガ専門出版社Vizコミックスが翻訳マンガを出版しはじめて1年かそこらという、邦訳マンガ史的には初期も初期な時期でして(この辺の流れはこないだ出した同人誌で書いたので詳細は略す)。

 でー、当時の翻訳マンガというのは、『エリア88』とか『カムイ外伝』あたりの、「長期連載作品」で、かつ「既に完結していた」作品(まあ、評価が定まってて、ヒットしたら続きが出しやすい作品)を選んで出版されていたのですが。

 そんな中、『AKIRA』はまだ連載中だったのに翻訳されたのだー、とか書くと、同作が特別視されていたことは、何となく伝わるでしょうか。

 また同作は、元々はVizが翻訳版の権利を取得しようと動いてたけど(正確には、当時Vizと協力関係にあったトーレン・スミスが動いてた)、後から北米大手コミック出版社のマーベル・コミックス社が版権取得に乗り出して、横からかっさらってった、なんてエピソードを書けば、「アメリカでも注目されていたのだ」ということは伝わるでしょうか。伝わんなきゃいいです(ションボリ)。

 ちなみに『AKIRA』は、当時のマーベル・コミックスの成年向けレーベルである、エピック・コミックスから発売されました。――エピック・コミックスについての解説は、これまた無駄に長くなるだろうから略します。要は、このエピックはコミックス・コードに縛られない、大人向けの作品を発表するためのレーベルで、生々しいバイオレンス描写が横溢する『AKIRA』にとっては、相応しい場であった、という。


※1990年代にダークホース・コミックス社から米語訳された『攻殻機動隊』第1巻は、特にレーティングを設けずに出版してたので、例の“ナメクジの交尾”のシーンがバッサリカットされて、「仮想空間でビキニで(全裸でなく)くつろいでた少佐がバトーに呼びだされて不必要に怒る」だけのシーンにされて、ファンを怒らせた一件を例にした「レーティングとかゾーニングは大事よね」ってハナシ、俺、今までしたことあったっけ?(知るか)


 んで、この『AKIRA』北米版は、「大手出版社から出るコミックはフルカラーが当たり前」という、当時のメインストリームのコミック界の風潮を受けて「左開き」「フルカラー」「分厚い単行本ではなく、各号68ページの“ちょい厚めのコミックブック”」という、「アメリカン・コミックスの伝統に極力則ったスタイル」で刊行されました。――もちろん、オリジナルの『AKIRA』はモノクロの作品だったので、アメリカ側で独自に全ページ彩色を行う、とかいう、日本人的にはワケの解らない事態になります。


※頭の固い小売店のオヤジは、フルカラーじゃないコミックや、右開きのコミックを「そんなのコミックじゃない」とか何とか大真面目に言い切って注文してくれない、とかいう話を、1990年代後半頃にトーレン・スミスが書いてた気がする<うろ覚えか。


 なお、北米版の製作にあたっては、新規のカラーリングに加えて、「英語が横書きであるのを受けて、吹き出しの形を縦長から横長に直す」「擬音や背景の店の看板などの手描きの文字を英語や日本語で描き直す(※左開きにするために「逆版」で刷ると、文字が「鏡文字」になるので、日本語でも描き直す必要があるのね)」「一部のページ構成を変更する」「擬音を描き変えた結果、生じる隙間に背景を描き足す」など、全ページに渡る修正が行われましたが、恐ろしいことにこれらの作業の多くは、大友克洋自身が行ったそうで。――アニメ版『AKIRA』の作業で忙しい時期だったろうに……(当時はアニメ版の製作のために、マンガ版の連載は中断してたハズ)。

 ……まあこの辺の、翻訳に当たって、北米市場向けに作品のフォーマット自体を大きく変える、あまつさえ作者本人に修正を求める、というのは、邦訳マンガの黎明期だったから、そして作者が無闇に凝り性の大友だったから、あと当時のマーベルが金持ってたからとか、世界に『AKIRA』を送りだそうとしてた講談社も協力的だったから等々の諸々の事情の下に成立し得たもので、「滅多にあることではない」ことは、一応、述べておきます。


 で、このエピック・コミックス版『AKIRA』のカラーリングは、スティーブ・オリフなる人物が担当しました。でー、大友によって選ばれたというこのオリフは、本作を担当するにあたりましてマーベルにかけあい、「カラーリングをコンピューターで行うこと」を了承させたそうで。


※当時はデジタル彩色は黎明期で、「デジタル彩色!」とか「全編コンピューターで作画!」とかいうソレが描き下ろしグラフィック・ノベルのウリになったりしてた時代です。


 そんなわけでこの『AKIRA』は、デジタル彩色を行った初のオンゴーイング・シリーズという栄誉を賜ったのでした。マーベルがデジタル彩色を一般のコミックに採用するのは1990年代中頃ですから、まあ、『AKIRA』が当時どれだけ最先端を行ってたかは、なんとなく伝わるでしょうか。

 なお、エピック版『AKIRA』は全38号が刊行されましたが(いうまでもなく全号フルカラーで)、末期の8号分は、大友の単行本(日本版ね)用の描き直しが終わらなかったために、刊行が大いに遅れました――第33号(1992年刊)から第34号(1994年刊)の間に至っては2年ほど間が空いてます。

 なお、エピック・レーベルは1990年代前半で事実上活動を停止していたのですが、『AKIRA』最終5号分を刊行するために復活し、『AKIRA』最終号の刊行と共に再度活動を停止しました(その後2003年にビル・ジェイマスがエピック・レーベルを復活させた話は面倒くさいので省略)。

 ちなみにマーベル/エピックは、『AKIRA』のソフトカバー版単行本も出してましたが、刊行の遅れなどの理由から1992年の時点で単行本の刊行は止まりまして、1994年にオンゴーイング・シリーズが再開されたあたりの分は単行本としてまとまりませんでした(あと、ハードカバー版の出版計画もあったけど、1冊も出ずに終わったとか)。


 ……なお筆者はオンゴーイング・シリーズおよび、マーベル/エピック版の単行本は未所持なので、エピック版『AKIRA』がどの辺まで単行本化されたのか、などの詳細は不明であります。――刊行停止した時点で第8巻まで出ていたので、日本語版の単行本と構成が違うのは明白ですが(日本版単行本を2分冊にしてたのかしら)。

 ついでにいえば、エピック版の後期のイシューは、日本版の単行本化時にける加筆・修正を大友が遅らせまくってたのを受けて、日本版単行本ではなく、「ヤングマガジン」掲載版を元にして刊行されているらしいのですが、これも詳細は不明。――正直、「適当なエントリ」のためにそこまで調べちゃられんがな。


 んな事情もありまして、北米版『AKIRA』は長らく「中途半端な所までしか単行本になってない」状態だったのですが。数年後(2000~2001年)、当時マンガを精力的に翻訳していたダークホース・コミックス社より、日本版の単行本全6巻を定本にしたソフトカバー版単行本全6巻が刊行されまして、ようやくアメリカの読者は『AKIRA』の単行本全巻を気軽に手にすることができたのでした。

 ――ただし、前述したように、ダークホース版は日本版を定本としているため、中身はモノクロ(※ただし左開き)でしたが(この頃はモノクロのMANGAはそれなりに知名度を得ていたのよ)。

 ま、部分的に「ヤングマガジン」掲載分を収録していた(らしい)エピック版に対し、その後描き直しが加えられてる単行本を定本としてるダークホース版の方がより完全じゃない? とか思いますが。


 ちなみにエピック版のコミックブックは、日本では『オールカラー国際版AKIRA』として刊行されてまして。これは、エピック版のコミックブック数冊(翻訳はされておらず、米語版のまま)と、日本語に訳したセリフを収録した対訳ブックレットをセットにして紙箱に納めた特装本で、全12集(全38号分)が刊行されております。

 なお、エピック版の刊行の遅れの影響で、こちらの『国際版AKIRA』も、第1集~第11集までが1988~1992年までにコンスタントに出ときながら、最終の第12集のみは1996年に刊行と、またえらく間が空くこととなりましたが。――いや、エピックは悪かないんですけど。


 なお、エピック版は末期のイシュー(30号台)が入手困難だったり、それなりなプレミアがついてたりするので、下手をすると『国際版AKIRA』を集めた方が、安くつくかも知れないですな。――いや、『国際版AKIRA』にしても末期の巻は割とプレミアが付いてますが、案外、その辺の古本屋で安値で買えたりするのね、アレ。

 ついでにいえば、ダークホース版『AKIRA』全6巻は、現在では絶版になってます。実は今(2012年)では『AKIRA』の米語版単行本は、講談社の子会社であるコーダンシャ・コミックスUSA社(2008年より北米に進出)が版元となってまして(流通はアメリカの出版大手、ランダム・ハウス社が担当)。まあ、中身はダークホース版と大体同じ(左開き、モノクロ)なんですが。


 なお、日本の講談社は、2003年から2004年にかけてエピック版(無論、フルカラーね)『AKIRA』を定本に、セリフを日本語に訳した『総天然色AKIRA』全6巻を出しております。

 ――これはオイラも持ってますが、中身がエピック版と完全に同じなのか(例の「ヤングマガジン」掲載分のページは存在するのか)は調べてません。

 ちなみに、この『総天然色AKIRA』は、あえてオリジナルの日本版『AKIRA』のセリフを用いずに、米語版『AKIRA』のセリフを訳しています(多分、翻訳テキストは『国際版AKIRA』のブックレットに収録されてたものと同じ)。


 だもんでこう、それぞれのバージョンを見比べてみると、例えば『AKIRA』(日本語版)第1巻の、このイカすセリフ&あえてフキダシを使わないイカす演出が


 エピック版では、おそらく「マンガの読み方」に不慣れなアメリカの読者に合わせて、普通のフキダシでしゃべってることにされ、なおかつ「ニュアンスは汲みつつ、アメリカ流の言い回しに変更したセリフ」になってて


 それが『総天然色AKIRA』では、米語版のアメリカンな言い回しを「あたぼうよ」とか「筋を通してやる」とかいう江戸っ子な雰囲気に変換してて


 実になんというか「アメリカと日本、それぞれの翻訳者が頑張って自国の雰囲気に合わせて訳語を考えているのだなぁ」などという感想を抱く訳です。


※2番目に引用した米語版の画像は実際にはエピック版ではなくてコーダンシャ版なのですが、第1巻あたりは、ダークホース版、コーダンシャ版共にエピック版と同じテキストを流用してるので気にしナーイ。


 っつーわけで、『総天然色AKIRA』の概要を話し終えた所で、今日はオワル。
  
  

  
  
関連記事
スポンサーサイト

タグ:アメリカのマンガ

●リメンバーナインティー、な日々。

2012.02.17 Fri

 こう、ブログ更新したいなぁと思ったけど、書き上げたテキストが、玩具だのプラモとかの話だったので、「アメリカン・コミックスのブログであるのに、久々の更新でこーいうのもアレであるな」と思ったので、ボツにしてみた(まぁ、その内リサイクルする)。

 っつーわけで、アメリカン・コミックス絡みのネタを書こうと思ったけど、最近のアメリカン・コミックスをロクに読んじゃないので、オイラが最近ブームにしてる1990年代ネタでお茶を濁してみようか、という。


▼どうでもよい豆知識:「当時のマーベルの発行部数の記録を塗り替えた」の、巻:

 こう、1990年代にアメリカン・コミックスの紹介記事とか、邦訳コミックスの巻末記事とか、ソニーが出してたオシャレアニメ雑誌「AX」のコラムとかで、イメージ・コミックスなり、当時のスターアーティストなりを紹介した記事を読んでたときに、ですな。

 それらの中の、トッド・マクファーレンのプロフィールで、「マクファーレンの『スパイダーマン』創刊号は、当時のマーベルの発行部数の記録を塗り替えた」なんて記述を、まあよく見かけたじゃないですか。ないですか。――ま、とりあえず、「あった」ことにしてください。

 でー、一方で、ジム・リーのプロフィールを読んでも、「リーの『X-メン』創刊号は、当時のマーベルの発行部数の記録を塗り替えた」とかいう記述があったじゃないですか。――ま、とりあえず(略)

 さらにはロブ・ライフェルドのプロフィール(まあ、当時ですらこの人のプロフィールが載るのはレアでしたが)を見てもね、「ライフェルドの『X-フォース』創刊号は、当時のマーベルの発行部数の記録を塗り替えた」なんて記述があったりして。――ま(略)

 要は、当時見かけたマクファーレン、ライフェルド、リーの3人のプロフィールで、一様に「当時のマーベルの発行部数の記録を塗り替えた」なんて書かれてたんですよ。ご記憶あるかは知りませんが、ま、とりあえず「そんな気がする」程度に思ってください。


 で、オイラ個人はね、当時、そうした記述を見かけるたびに、「発行部数記録の大安売りだな」とか思いつつ、「なんで“頂点は1人”なはずの発行部数の記録保持者が3人いるねん」とか首を捻ってたですわ。

 ま、首を捻ってはいたもののですね、それらの詳細について調べるでもなく(当時はインターネット黎明期でダイヤル回線でテレホーダイなモンで、なんかあったらネットで検索、とかいうこともしにくいし。そもそもGoogleすらなかったしな!<1998年創立なのよ)、「ま、どうせ洋画の宣伝の“全米ナンバー1!”みてぇに、なにかしらのレトリックで、3人とも記録保持者ということにしてんだろ」とか結論づけて、その後、気にするのを辞めてたんですが。


 で。

 最近、なんとなくマクファーレンについて調べてたら、例の「発行部数の記録を塗り替えた」件について、触れてる資料を見つけてな。

 それを読んだら、「ああ、こういうことか」と納得できたので、そのことについて言及してみようと思った次第。前置き長くてすみません。

 いやウスウス推測してるでしょうが、要は最初にマクファーレンがそれまでの発行部数を塗り替えて、その1年後にライフェルドがマクファーレンの記録を塗り替えて、さらにその後リーがライフェルドの記録を塗り替えた、という、「順番に塗り替えてった」という、そんだけの話だったんですが。


 とりあえず、淡々と事実だけを語ってきますが。


・マクファーレンの「発行部数の記録を塗り替えた」ハナシ:

 まず1990年に、当時のスーパースター・アーティスト、トッド・マクファーレンがライター、アート(ペンシル&インク)双方を担当するというコンセプトの『スパイダーマン』誌が創刊されたワケですが。

 ちなみにこの雑誌は、当時、『アメージング・スパイダーマン』誌のアーティストを担当して高い人気を博していたマクファーレンが「好きなように絵を描きたい、それを実現するには僕がライターになるしかない!」とかいいだしたのを受け、当時の担当編集者ジム・サリクラップが立ち上げたという、非常にバブリーな経緯によって創刊されてます。

 最近、アメリカン・コミックスを読み出した諸兄にはピンと来ないでしょうが、この当時のトッド・マクファーレンというアーティストは、それはそれは大人気だったのですよ。奴が「あれしたい」っていったら、それが大企業マーベルの注力する企画として動いちゃったりするほどに。

 でー、この『スパイダーマン』誌の創刊号は、265万部も発行され、単一のコミックブックでの発行部数の記録を塗り替えたのでした。ね? スーパースター・アーティストでしょ?

※ちなみにこの数字は発行部数であって実際に売れた数ではないことは注意な。


 まあ、レアな「プラチナム・エディション」を含む全7バージョン(違うのは表紙だけで中身は一緒)が「コレクターズアイテム!」的なアオリと共に発行されたんで、投機目当てのコレクター(当時はそういう人種がいたのだよ。信じられないだろうけど)が、1人で何冊も何十冊も発注したために発行部数が伸びた、という、バブリーな背景があったことは述べときます。

※メインストリームのアメリカン・コミックスは、発行の2ヶ月前にコミックショップなぞが問屋に必要な部数を発注し、それを受けて出版社が発注のあった分だけ刷る、とかいうスタイルなので、発売日の朝から量販店の前で並んだりしなくても、割合、欲しいだけの冊数が手に入ります。――いや、「限定○○○○部!」とかいうコミックは、さすがに各ショップへの割当量とかが決まっちゃいますが。ま、普通のオンゴーイングシリーズの第1号なんてなぁ、注文があればあるだけ刷ります(まあ、『スパイダーマン』も一番レアなプラチナムエディションだけは部数限定だった気がしますが)。


 ああ、ちなみに2012年現在の「バリアント・カバー」(「○○冊注文するごとに1冊、人気のアーティストが描き下ろした特別な表紙のコミックが配本されるよ!」とかいうアレ)と異なり、この『スパイダーマン』の7種類のバリアントカバーのアートは1種類だけです。

 この「全部同じ絵」が描かれたカバー群の「何が違うか」といいますと、「背景の印刷に使われてるインクが違う」のです。……いや、マジで。

 参考のために内訳をいうと、まず、普通のインクで刷られた通称「グリーンカバー」、次にシルバーの特色インクを使って刷られた「ブラックカバー」、でもって第2刷目に、ゴールドの特色インクを使った「ゴールドカバー」、それに箔押しの「プラチナム・エディション」の4種類。

 このうち、グリーンとブラックは「コレクターズ・アイテム」と印刷されたポリバック(まあ、ビニール袋ね)に封入されている別バージョンがあり、一方でゴールドカバーには、レアなUPCコード(バーコードのことな)が印刷されているバージョンも有ったので、それらのバージョン違いを合計すると全7バージョンになるわけで。

※当時、ポリバック入りのコミックを「保存用」「読む用」で2種類買った経験のある人、手を挙げなさい。

 はーい(<手前ぇじゃねぇか!)

 ……すいません、『ゴーストライダー』の「ライズ・オブ・ミッドナイト・サンズ」クロスオーバーの全話を「保存用」に買って、「読む用」にTPB『ライズ・オブ・ミッドナイト・サンズ』買いました……。あと神保町の中野書店で『ゴーストライダー』アニュアル第1号(元はポリバックに封入されてたけど、開封済み中古だった)を買って、その後に未開封のものを買い直しました。……ちなみに当時のポリバックは、光にあて続けると分解するエコな素材だったんで、暗所に保存するのが基本ですね。

 画像検索したら、こちらのホームページに全バージョン掲載されていたのでリンクしてみる(ね、同んなじ絵でしょ?)。

※なお、リンク先の右の方にある「クロミウムカバー」は後年(1990年代後半頃)、「過去の名作をプラスチック製のキラキラ光るカバーにした“クロミウム・エディション”として再版する(中身は広告が自社広告にさし替わったぐらいでほぼ同じ)」とかいう、ワケの解らないブームの頃に出たもの……だと思う。

 思い返すと、本当にワケが解らないよな、クロミウム・エディション。いや、俺も当時鳴り物入りで立ち上がったクリフハンガー・レーベルのコミックス(『デンジャーガール』『バトルチェイサーズ』『クリムゾン』『スチームパンク』)の、各創刊号クロミウム・エディション買ったけどさ(<オイ)。あと、DCミレニアム・エディションの『ジャスティスリーグ』のクロミウムも買ったな。

 ……閑話休題。

 ま、そんなわけで、マクファーレンは「バリアントカバー」の恩恵もあって、『スパイダーマン』創刊号を265万部も刷ってもらえたのですよ、と(<今までグダグダ書いてた話が1センテンスでまとまったぞ、オイ)。


・ライフェルドの「発行部数の記録を塗り替えた」ハナシ:

 が、この当時のスーパースター・アーティストはトッド・マクファーレン1人ではありませんで。そう、あのレジェンダリー・スーパースター・コミックス・アーティスト、ロブ・ライフェルド大先生も、当時のマーベルには居たのですよ! ですよ!

 な、わけで翌年、ロブ・ライフェルド脚本&作画(脚本はファビアン・ニシーザと共著)の超ホット・コレクターズ・アイテムな『X-フォース』が創刊されまして。この第1号は当時のXーメン・フランチャイズの大ブームと、スーパースター・コミックス・アーティスト、ロブ・ライフェルドの人気もありまして、実に390万部もの部数を計上しました。

 当時の無闇なX-メン人気もあったとはいえ、マクファーレンの記録に100万部以上も差を付けるあたり、さすがにレジェンダリー・スーパースターですね。――最近、アメリカン・コミックスを読み出した諸兄にはピンと来ないでしょうが、この当時のロブ・ライフェルドといえば、朗らかな笑顔と大言壮語と勢い重視のアートで知られ……今と同じじゃねぇか。

 ああ、ちなみにこっちは、5数種のトレーディング・カードのいずれかが封入されているという、AKB商法(こっちが先やがな)なソレが執られており――ああ、違うのはカードだけで、表紙も中身も一緒ですよ?――更に背景にゴールドインクが使われた第2版(こっちにはカードは付かない)の計6バージョンが出て、やはりコレクターが複数冊買っていく感じで、部数を伸ばしました。――ちなみに、このゴールドカバーは1万部しか刷られなかったので、『X-フォース』創刊号の各バリエーションの中では一番レアリティが高いらしいぞ。

 ――どうでもいいけど、このころのマーベルって、第2版をゴールドインク(微妙に発色が鈍いのよね)で背景を塗りつぶす、というのをなんでか多用してたよね。『ゴーストライダー』第15号とか(ピンポイントな例示過ぎる)。

※薄々お気づきでしょうが、当時の筆者は『ゴーストライダー』にドハマリしてて、ポリバック入りのコミックスを買って未開封で壁に飾ったり、複数のカバーを押さえたり、「ミッドナイト・サンズ」関連誌全部買いしてたりしてました。


・リーの「発行部数の記録を塗り替えた」ハナシ:

 でーまぁ、このレジェンダリー記録も、ですな。当時のマーベル最強のスーパースター・アーティスト、ジム・リーが、当時のマーベル最高峰のコミック『Xーメン』の新シリーズ創刊号で追い抜くわけですが。……しかも、『X-フォース』創刊の、わずか2ヶ月後に。

 っつー訳で、ジム・リー作・画の(※最初のストーリーアークの脚本はクリス・クレアモントと共著)『Xーメン』創刊号が、実に750万部という、ライフェルドの記録を大幅に上回る(ほぼ倍)数字を打ち立てます。

 さすがに、当時のマーベルの看板雑誌(今、『アベンジャーズ』が看板雑誌なのになじんでる読者は違和感あるのかしら)である『X-メン』に、「表紙をチョロリと描いただけで売上げが伸びる」スーパースター・アーティスト、ジム・リーの相乗効果たるや、スサマジイものですな。ウォーズマンのベアークロー二刀流並の数字のインフレですわ。

※一説によると、750万部のうち、実売は300万くらいらしいけどなー。

 ――ああ、例によってこちらも、5バージョンのカバーが発売されてますね。ジム・リーが描き下ろした横に長いイラストを4等分し、それぞれ異なる表紙として発売した通常版4バージョン(全バージョン集めて順番に表紙を並べると、1枚の絵になるよ!)と、それら表紙をひとまとめにした横に長~い表紙(折りたためるよ!)を持つデラックス版の、計5バージョンです。

こちらのホームページで全バージョンの絵が見られます。

 なお、このデラックス版は上質紙を使っており、質的にもデラックスになっております。――ただし、通常版が各1ドルだったのに対し、こちらは3ドル95セントと、通常版約4冊分の値段なんですが。

 ちなみに、『X-メン』フランチャイズが上質紙を恒常的に使いだすのはもう数年後、「リージョン・クエスト」の頃からですな。この頃のマーベルは「『X-メン』フランチャイズは上質紙を使ったデラックス・エディションと、普通の紙を使ったニューススタンド版の2種類を出すことにするよ!」とかいうワケの解らない政策をとってまして(中身は紙以外同じで、ニューススタンド版の方がやや安い)、それが気づいたらニューススタンド版も上質紙を使うようになってましたな。

 当時、オイラはデラックス版で買い続けようとしたんだけど、時々間違ってニューススタンド版も買っちゃって、泣く泣くバックナンバーでデラックス版を買い直したなぁ。でー、デラックス版を買い直したぜ! と思ったら、よくよくクレジットを見たら、「第2刷」だったりしたんで、ムキになって初版買い直して、都合3冊手元に残ったりな(<我ながら無意味なこだわりだと思う。ちなみに『ガンビット&エクスターナルズ』の第1号。<よほど悔しかったんでいまだに記憶に残ってやがる)。


 っつーわけで、1990年代の適当なトリビアをダシにしつつ、1990年代の適当なる思い出を閑話として挟み込むという、俺得なエントリ、これにてオワル。
  
  
関連記事
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。