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●アメリカの戦争マンガ、の巻。

2008.01.13 Sun

 昔書きかけて打ち捨てていたテキストを、適当に整えてアップしようシリーズ。

 今回は、DCの「ホーンテッド・タンク」の紹介記事ナリ。


▼ショーケース・プレゼンツ:ホーンテッド・タンク<Showcase Presents: Haunted Tank>

Showcase Presents: Haunted Tank Volume 1
Showcase Presents: Haunted Tank Volume 1

(2006/05/30)
Bob Kanigher 他

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「ホーンテッド・タンク」は、DCコミックスの戦争ものコミックの大家、というか、ほぼ1人で30年間戦争ものコミックを描き続け、このジャンルを支えていた男、ロバート・カニガー<Robert Kanigher>(愛称のボブ・カニガーで呼ばれることも多いので注意)の代表作の1つ(その他の代表作は『サージェント・ロック』『アンノウン・ソルジャー』など)。
「ホーンテッド・タンク」の初出は、戦争ものの専門誌『GIコンバット<G.I. Combat>』誌の第87号(カバーデート・1961/5)。以降、同誌の看板タイトルとなったこの作品は、『GIコンバット』が1987年に第288号で休刊するまでの、実に26年もの間、連載が続きました。

 物語の主人公は、アメリカ軍のM3スチュアート軽戦車の戦車長をつとめるジェブ・スチュアート。
 彼の乗る戦車は、車両名の由来となった、J.E.B.スチュアート将軍(南北戦争の南軍の名将)の霊が守護霊として憑いてまして、故に「幽霊戦車」ホーンテッド・タンクを自称しております。
 物語の基本は、機転と勇気を兼ね備えたスチュアートと、その仲間たちが将軍の幽霊の助言に助けられつつ、ドイツ軍のティーガー戦車やパンター戦車をバッタバッタとなぎ倒していく……という感じ。
 小兵が知恵と勇気で強敵を倒すという、おとぎ話の基本ですな。日本じゃ、一寸法師や牛若丸に始まり、戦後の少年マンガだのに受け継がれてったこの路線ですが、アメリカでもこの種の物語は存在するのですな。

 ブッチャケ、第2次大戦のアメリカ軍は、戦勝国ではあるもののドイツの戦車には終始痛い目に遭わされ続けたという屈折から誕生したドラマでしょう。
 なおカニガー自身は1915年生まれで、第2次大戦の開戦時には20代後半だったのですが、従軍経験はありません。ま、コミックの取材時に経験者の愚痴を山ほど聞かされたんじゃないかと思いますか。

 そんなわけで本作の戦闘シーンは、市街地の狭い路地で待ち伏せして零距離射撃をお見舞いしたり、チョコマカ動いて同士討ちを誘ったりとか、まぁ、そんな感じのシーンが頻出します。
 ……ま、現実にはM3軽戦車の主砲じゃドイツの主力戦車の装甲は打ち抜けないし(カタログデータを鵜呑みにするなら、400m以下の至近距離で側面装甲を狙えば、なんとか貫通できる……かも程度)、そもそもM3軽戦車を「スチュアート」と呼んでたのは、アメリカ軍にM3軽戦車を供与されたイギリス軍だったりするし、ていうか作中のM3軽戦車は、大概、イギリス軍仕様で描かれてる(車体後部の燃料タンクがなく、車体前面左右にある2門の機関銃が撤去されてない)とかいう突っ込みどころは多々ありますが、まぁ、それはそれ。――日本の戦争マンガだって、近代まではプラモを丸々引き写して描いたり、考証がムチャクチャだったりしたもんだし。

 もっとも、この連載の事実上の主役であるM3軽戦車は、連載から13年目の1974年に大破しまして。以降はそれなりに戦闘力を備えた中型戦車に搭乗(スクラップ置き場にあった戦車のパーツをツギハギして組み上げたので正式名称はなし。通称ジグソー・タンク)。
 更に末期は、このジグソー・タンクも大破してしまい、M4シャーマン中戦車に転換、初期の弱々しさは何処へやら、新兵器ロケットランチャーを搭載してナチス戦車隊を一網打尽とか言うパワフルさも見せつけやがって苦笑しますが。

 一方で、そうした戦車のドンパチの合間に挟まれる、極限下での人間ドラマも本作の魅力でありまして。
 強い絆で結ばれた戦車の乗員たちが、それぞれの長所を生かし、コンプレックスを乗り越えて一丸となって戦う、といった「勇ましいドラマ」、それに戦場の悲惨さや戦いの空しさといった「メローなドラマ」(日系アメリカ人の志願兵と対立&和解する話なんかも、かなり初期にやってるのが偉い)、また時にはドイツ軍のトンデモ超兵器が登場する「ヘンな話」(※)など、ストーリーの振り幅が広くて、読んでて飽きないですわ。

(※)オイラのお気に入りは、戦車の中で寝てた(<キャンピングカーじゃねぇんだから)一行が目を覚ましたらドイツ軍の実験部隊の捕虜になってて、弾薬を抜かれたM3軽戦車でドイツの試作兵器から逃げ惑う話。

 スチュアート将軍の霊の声が聞こえるのはスチュアート中尉だけで、他の搭乗員はスチュアートをホラ吹きだと思ってるんですが、それでも彼らは中尉の指揮能力や瞬間の判断力には信頼を寄せている、というキャラクター配置のバランスも良いです(確か、バイキングの英霊だかの加護を受けるドイツ戦車との戦い、なんてのもあったなぁ)。

 こう、日本の戦争マンガは、たいがい主人公が日本人かドイツ人で、「孤軍奮闘するけど、連合軍の物量の前に敗北する」的な、「滅びの美学」を背負った影のあるドラマなのに対して、この「ホーンテッド・タンク」は、戦争の不条理などは描きつつも、基本的には「努力・友情・ジャスティスで、勝利を掴む」的な、屈折のない少年マンガとなってる(あるいは、屈託のない少年マンガにできる)のが、対照的であることだなぁと、思わされたり。

 いや、アメリカン・コミックスの戦争マンガにも、主人公が理不尽に死んで終わる、影のあるストーリーはいくらでもありますが。そういうのは、まぁ読み切りの短編でして。対して連載マンガである「ホーンテッド・タンク」は、連載が続く限り「勝ち続けること」を宿命付けられてるんで、そうした影は必然、削がれるのですな。

 ……そうか、日本の戦争マンガが、たいがい短編か、単行本1巻程度で終わるのは、「勝ち続けられないから」か。
 戦勝国だからこそ25年以上も連載できるんだよなぁ、などと言葉をもてあそびつつ。

 こう、オットー・カリウスの回顧録を座右の書にしてて、「戦場とは悲惨なものであるのだ」的な方も、そうしたご自身の信念を再確認する意味でも、戦勝国による戦争マンガ、ってのを確認しといて損はないんじゃないか、と。
 いや単に、実写ドラマ『コンバット!』みてぇな、通俗娯楽としての戦争ものを好む方にもオススメしますが。
 
 
余談:『GIコンバット』の30周年記念号で、カニガーの歴代戦争ものコミックのキャラクターが一堂に会して、とある洞窟の奥にあるナチス秘密工場に潜入する、ってな話があるのですが。
 話の途中で、ホーンテッド・タンクが侵入不可能な地形に出くわした際、サージェント・ロック小隊がホーンテッド・タンクを「バラして」、平坦な地形まで運び、その後組み立て直すという描写があって、「いや、さすがにそれは無理」とか、ツッコミいれましたが(この時点でホーンテッド・タンクはM4シャーマン中戦車に転換してるし)。


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