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●アダム・ウォーレンなレビュー。

2008.04.19 Sat

 っつーわけで、『エンパワード』第3巻のレビューだぜよ……と見せかけて、何故かイマサラこの作品をレビュー(実はウチのブログ名物「過去に書きかけのテキストをリサイクルしてみよう」シリーズ)。

Livewires: Clockwork Thugs, Yo
Livewires: Clockwork Thugs, Yo (Livewires)Adam Warren Rick Mays Jason Martin

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 オリジナルは2005年にマーヴル・コミックス社の「マーヴル・ネクスト」レーベルから刊行された全6話のミニシリーズ。
「マーヴル・ネクスト」ってのは、当時、「既存のマーヴルユニバースの設定を流用しつつ、新しい世代に向けたヒーロー」的なコンセプトで送り出されてった一連のコミックで、『ヤング・アベンジャーズ』とか『アラーニャ』『X-23』とかも、「マーヴル・ネクスト」のお仲間ですな。
 どれも、ダイジェストサイズ(日本のマンガの単行本に似た版型)で単行本がでてた、ってのも特徴ですか。

 本作のストーリーはこんな感じ。

 主人公たち5人は、合衆国政府の援助を受ける(原語で言うと「quasi-governmental」:準政府、特殊法人)秘密計画、「プロジェクト・ライブワイヤー<Project Livewire>」によって造られた人造人間。
 部分的にシールドのライフ・モデル・デコイ(Life Model Decoy:通称・LMD、特定の対象の外観・人格を完璧に複製したアンドロイド)の技術やマナイテス(the Mannites:旧『Astonishing X-Men』に登場した超マイナーな人造生命体の一団)が用いられており、“そのように振る舞っている限り”、人間と全く見分けがつかない。
 しかし、高度なナノマシン(通称・スマートウェア<smartware>)の技術によって強化された彼らのボディは、超人クラスの怪力、耐弾性などを持ち合わせており、正に一騎当千のエージェントである(まぁ、持ってない個体もあるけど<後述)。
 彼ら“ライブワイヤーズ”の目的は1つ。他のトップシークレットの準政府プログラムに対する妨害・破壊工作を行うこと。彼らの「異母兄弟」とも言うべきハイテクノロジーとの戦いは熾烈を極め、物語の開幕時には、ライブワイヤーズのメンバーは、わずか5名を残すのみとなった。
 しかし、戦いは継続されねばならない。しこうして彼らは、テロ組織A.I.M.の分派やテクノパイレーツ、果ては自己進化を始めたLMDの軍団などと戦うのだった。
 だがやがて(具体的には第4話から)、彼らの前に想定外の強敵が現れる。化け物じみた自己進化を遂げた“それら”の前に、1人、また1人と倒れていくライブワイヤーズ。任務達成のために、“見習い”ライブワイヤーズのステム・セルが下した決意とは? そして、ライブワイヤー計画の過去に秘められた謎とは?

 ……とかなんとか。

 で、ライブワイヤーズのメンバーはこんな感じ。
 人造人間である彼らは特定の名前などなく、単にコードネーム(っつーか、アダ名)で呼ばれてます。

●ステム・セル<Stem Cell>:本編の主人公。物語の冒頭で起動されるライブワイヤーズの“新メンバー”。外観はおとなしめの金髪メガネっ娘。ライブワイヤーズの各メンバーは特定の任務に対応して各機能が特化されているのだが、起動したばかりの彼女は、まだプレーンな状態。故に「幹細胞<Stem Cell>」のコードネームで呼ばれる(っつーか、ライブワイヤーズの新人は、誰でも起動したての頃はステム・セルの名で呼ばれる。※幹細胞がなんなのか知らない人は、ググれ)。チームの任務や各メンバーの能力、あるいは自分自身の特性についての知識を持っていないため、適宜、各メンバーからの説明を受ける(スマートに説明ゼリフを挿入するテクニックですね)。

●ゴシック・ロリータ<Gothic Lolita>:ウォーレンいわく「日本の“コスプレ”ファッションのトレンドにちなんだ名前さ」。その名の通り外観はゴスロリファッションに身を包んだ小柄な少女。実際には、高密度のナノマシンにより、シングやハルク並の超人級の怪力を誇るチームのパワーハウス。チームメイトいわく「黒のベビードールに身を包んだベン・グリム」。外観・性格設定は無口、無表情なクール系美少女で、冷静に敵ロボットの手足をモいでくとこがステキ。

●コーンフェッド<Cornfed>:コーンフェッドってのは、(アメリカの代表的な穀物である)トウモロコシを食べて育った人のこと。転じて、生粋のアメリカ人、あるいは大柄で健康的で純朴な人間(悪く言えばウドの大木)をさす言葉。まぁ、「お米の国の人間」で我らジャパニーズを指し、「大メシ喰らい」といえば気の良いデカブツを思い浮かべる(多分)のと同じようなモン。チーム1の巨漢で、アダ名そのままに「中東部の農家の息子」な感じの純朴な面構えを誇る。その体躯に反して、身体能力は並程度。チームでの役割は整備係で、その巨躯内にはストックされた相当量のナノマシンを用い、他のメンバーをリペアする(リペア方法:傷口に向け、口からゲロみてぇにナノマシンを出す)。また体内に蓄えられたスマートウェアの演算能力を利用してのハッキングにも長けるとか。

●ソーシャル・バタフライ<Social Butterfly>:諜報任務担当の金髪ねーちゃん。人造物ならではの美貌(相手の好みに合わせていくらでも変形可能。髪の色も変わるよ)に加えて、サブリミナル・ボイス、人工フェロモンなど(あるいは、対象の脳味噌に直接介入して)を駆使して対象を魅了し、必要な情報を引き出す。戦闘時には近距離の敵を無力化したり、目撃者にニセの情報を植え付けたり、といったことにも転用される。ステム・セルを抱えたままビルの5階までジャンプするなど、身体技能もそれなりに優れる。自分の顔の一次装甲を外して「素顔」を見せるのが癖(『アップルシード』のコットスか)。

●ホローポイント・ニンジャ<Hollowpoint Ninja>:その名の通り、ステルス任務に長けたメンバー。ゴシックロリータが肉弾戦のエキスパートなら、こちらは武器使いのエキスパート。戦闘時は2丁拳銃や長物だのを愛用(まぁ、拳銃ってもミニレールガンだの超硬ワイヤーの射出機だのといった、ハイテク兵器ですが)。また、レーザー銃による10マイル先からのスナイピングなども得意とする。四肢に磁力を発生させて、天井を歩く、なんてぇニンジャっぽい挙動も見せる(劇中ではゴシック・ロリータもこの能力を使ってるので、別に彼特有の技能、って訳じゃなさそうですが)。

 あー、言い忘れてましたが、本作にはウォーレンは、基本的にはライター&カバー・アーティストとして参加してます。
 このカバー・アートのみ、というのが、ある種の罠でして。「ウォーレンさまの絵が大好き♪」な感じのファンが、カバーイラストに引かれて本作を買うと、予期せぬダメージを喰らいますので注意しましょう。

 ちなみに、中身のアーティストは、DCで『アーセナル』ミニシリーズや『ザタンナ』ワンショットなんかを描いてたリック・メイズ<Rick Mays>。

 絵としては、こんな感じのスタイル(この人、個人サイトとか持ってねぁから、余り良いサンプル出せねぇけど)。こう、アダム・ヒューズをお湯で溶いて、マンガ・スタイルのダシを振りかけて一煮立ちさせたような絵とでも言いましょうか(<わからん)。

 どうでもいいけど、Googleで、「Rick Mays」で画像検索すると、かなり上位にこんなページが表示されるのが、非常に気まずいですね。<ワザと探してるだろ、お前、絶対。

 個人的には日常的の延長線上にあるようなコミックは描けても、ウォーレンの志向する、SF的な派手な画面造りはどうだろなぁ、という感じなんですが、当のウォーレンは彼のことを買ってる模様。

 ウォーレンとメイズは、ウォーレンがライター(&カバーアート<ここにも罠が)を担当していた『Gen13』第1シリーズの最末期(ブッチャケ、打ち切られる前の3話分)で組んで、何となく意気投合したとかで。
 その後、『X-メン アンリミテッド』掲載の短編などでも、ウォーレン(ライター)、メイズ(アーティスト)の体制でこなしてます。
 あと幻に終わった『ダーティペア/スーパーマン』の企画もメイズがアートを担当する予定だったとかで、「買ってる」ブリがうかがえますね。

 ちなみに、この『ライブワイヤーズ』の絵ですが、実は第5号以降、アーティストのクレジットにウォーレンの名前が追加されてましてね。
 ……多分、ウォーレンがライティング&レイアウトに時間かけすぎて、メイズがアートにかける時間が削られて、結果、ウォーレンのレイアウト(ウォーレンは、自分がアートを担当しなくても、完成原稿に近いクオリティのレイアウトを描く悪癖がある)を流用して完成原稿が描かれた……とかいう事情じゃないかと思うのですが(<いつもの俺の勝手な予想ですので、信用しないように)。

 第6号なんか、1ページごとにメイズとウォーレンのキャラが混じって、非常になんだかなぁ、といった具合です(ラストの大ネタが明かされるトコでウォーレンの絵なのは個人的には良かったんですが)。
 っつーワケで、「ウォーレンの絵」目当てに本作を買った人は、後半で微妙にその目的が達せられます。よかったですね(ヲイ)。

 ストーリーの構成は、アクションがメインな「現在」のストーリーを軸としつつ、要所に回想シーンが挟まれ、その回想シーンではナノテクだのライフ・モデル・デコイだのライブワイヤーズ開発者の思惑だのといった、設定解説や伏線などのBLAH BLAH BLAHが語られる、といった、ウォーレンが得意とする「例の構成」。
「SFを書こうとしてる時のウォーレン」というと、ファンなら解るんじゃないでしょうか。解りませんか。

 個人的には、この「合間に回想シーンが挟まる」構成は、面倒くさい解説セリフをアクションと分離させられる、っつー点に置いては良いとは思うのですが。
 ただ、「現在」の方と、「回想」の方のコミックを読むスピードの格差が激しくなる場合(要するに、「現在」の方はアクション主体で1ページ数秒で読み終わるのに、回想シーンは読むのに1ページ1、2分かかるようなことがある)は、読んでて違和感あるなぁと思う。
(……この違和感は、俺が英語読むのが遅いせいで、アクションシーンとセリフの多いシーンとの速度差が大きく開いちまうことにも起因してはいますが。ちなみに、ウォーレン作品で、この速度差による違和感が顕著なのは、「現在」のシーンがほぼアクションだけで構成されてる『ザ・タイタンズ:シザース・ペーパー・ストーン<the Titans: Scissors, Paper, Stone>』ワンショットじゃねぇかと。内容的には大好きですが)

 が、この「速度差」が、本作では、割と「現在」のシーンでも、それなりに台詞やモノローグがあって、あまり格差がない感じで、読み易かったです、と(これは、本作が「チームもの」で、掛け合いが多いのが功を奏してるかと)。

 全体的な感想としては、絵的にはいろいろと問題はあるけど(……ブッチャケ、リック・メイズいらな……いやいや)、ストーリーは、ウォーレン作品の中では屈指の完成度を誇ってる、と思うですよ。
 第4号後半からアクセル全開で展開されるライブワイヤーズvs.ラスボス軍団の絶望的な戦い(主人公連中がメカなので、容赦なくズタボロのバランバランにしてくウォーレン先生のサディストっぷりがステキ)は、読んでてかなりゾクゾクするし。
 あと、前述した現在のシーンと過去の回想が交錯してく例の構成で張られた伏線が、ラストで明かされる意外な事実に集束してくのが、うめぇと思った。

 絵さえアレなら(<まだいうか)『ダーティペア:シム・ヘル』以上の傑作SFコミックになってたと思う。マジで。

「俺はウォーレンの絵だけじゃなく、SFガジェット感満載なストーリーも好きなんだぜ!」とかいう人は、『アイアンマン:ハイパーヴェロシティ』(これもウォーレンはライティングだけだけど、どんでん返しが連続する1~2話の構成とか、主人公の設定とかが非常にイカスSFコミックやねん)共々買うことをオススメするのぜ。
  
  
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タグ:アメリカのマンガ 今日読んだアメコミ

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