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●どうでも良い解説:キリング・ジョークのラストのジョークについて。

2008.09.03 Wed

▼余計なお世話かもしれないが、あのジョークのオチを解説しよう、の巻:

 こう、突発的に『キリング・ジョーク』のラストでジョーカーの言ったジョークのオチについて(まぁオレ個人の解釈ではあるけど)、一度キチンと解説しとこうかと思った。

 ブッチャケ、某巨大掲示板の某スレッドに書き込みしようと思ってたねんけど、どうしても長くなるんで、面倒だからコッチで気の済むまで長々と書いちまえ、と思ってな。

 っつーワケで。

※以降の本文が丁寧語になってるのは、昔、このジョークの解説を書こうと思って書きかけてたテキストを流用してるからで、特に意味はないので気にするな。  

  


  
 さて、まずは件のジョークの全文を引用しますと、こんな具合です。

‘See, there were these two guys in a lunatic asylum
 とある精神病院に二人の男がいた

and one night... one night they decide they're going to escape!
 ある晩、二人はもうこんな場所にはいられないと腹をくくった 脱走することにしたんだ

So like they get up on to the roof, and there, just across the narrow gap,
 それで屋上に登ってみると、狭い隙間のすぐ向こうが隣の建物で……

they see the rooftops of the town, stretching away in moonlight... stretching away to freedom.'
 さらに向こうには、月光に照らされた夜の街が広がっていた……自由の世界だ!

‘Now the first guy he jumps right across with no problem. But his friend, his friend daren't make the leap.
 で、最初の奴は難なく飛んで隣の建物に移った。だが、もう一人の奴はどうしても跳べなかった。

Y'see he's afraid of falling...
 そうとも……落ちるのが怖かったんだ

So then the first guy has an idea.
 その時最初の奴がヒラメいた。

He says "Hey! I have my flash light with me. I will shine it across the gap between the buildings. You can walk across the beam and join me."
 奴ぁ言った「おい、俺は懐中電灯を持ってる! この光で橋を架けてやるから、歩いて渡って来い!」

But the second guy just shakes his head. He says...
 だが二人目の奴ぁ首を横に振って……怒鳴り返した

he says, "What do you think I am, crazy?"
「てめぇ、オレがイカれてるとでも思ってんのか!」

"You would turn it off when I was half way across."
「どうせ、途中でスイッチ切っちまうつもりだろ!」



 ポイントは、「最初の奴」の言ったこのセリフです。
Hey! I have my flash light with me. I will shine it across the gap between the buildings.
You can walk across the beam and join me.

 実は下線部「the beam」は懐中電灯の「ビーム(beam)」と「梁(beam)」がかかっています。

※「梁」というジャパニーズの意味がわからない人は辞書をお引きください。

 つまり「最初の奴」は、懐中電灯のビームでビルとビルの間に「梁」をかける、と言っていて、この光の「梁」の上を歩いてこっちに来いと言ってるのです。
(※うっかり「ビルとビルの間にかかっている梁を懐中電灯で照らしてやるので、こちらに来い」という意味に取ってしまわない様に)

 邦訳版だとここは「光で橋を架けてやるから」といった具合に、「梁」ではなく「橋」とした上で意訳してますね。


 さて、このテキストを読んでいるあなたは、とりあえず上記の発言に水平ツッコミを入れることを推奨します。なぜなら、光の上を人が歩けるわけはない。当たり前です。

 ですが、この男は真顔で「光の上を渡れ」と言っています。なぜならこの人はクレイジーだからです。わかりますね?


 さて、このクレイジーな男の発言に対し「二人目の奴」(無論、この人もクレイジーです)は、
「てめぇ、オレがイカれてるとでも思ってんのか?」と返します。

 1人目のクレイジーさんの「光の橋を渡れ」という常軌を逸した提案に対し、2人目のクレイジーさんが(自分もクレイジーなのにも関わらず)「俺をイカれてると思っているのか?」と返す。

 言うまでもなく、これはギャグです。こう、観客側がこのツッコんでる二番目の奴に対し、「お前が言うな」と心中でツッコミを入れるタイプの考えオチですね。


 ……で、このツッコミでギャグが完結したと思いきや、「二番目の奴」は更に続けます。

 この最後の1行こそがこのジョークの本当のオチ、2段オチの2段目なのです。

You would turn it off when I was half way across.
「どうせ、途中でスイッチ切っちまうつもりだろ!」

 わかりますか? この男の言ってることが。

 わからない人(<昔のオレ)の為に補足すると、この男はこのように言ってます。
「どうせ俺がビームの上を歩いていって、途中までさしかかったら、懐中電灯のスイッチを切ってビームを消すつもりだろう!(そしてオレをビルから落とす気だろう!)」

 ……そう、実はこの男は「ビームの上を歩くことができる」ことについてはツッコんでない、むしろ光の上を歩けることを前提に話をしてます。

 つまり、先ほどの「俺をイカれてると思っているのか?」というセリフは、「ビームの上を渡れ」という発言自体へのツッコミではなかったのです。

 本当にこの男が心配していたのは「ビームの上を半分まで歩いていった所で、向こう側の男にビームを消されること」だったのです(なぜなら、向こう側の男はクレイジーな人で、そんな野郎を信じるのは「頭がイカれてる」奴くらいだからです)。

 つまりこのジョークは、気の違った提案、絵空事の提案に対し、ちょいとオカしげな響きのツッコミをしたと思いきや、実はそのツッコミ自体が、まるで見当はずれな方向に放たれていたという、二重、三重にクレイジーなやり取りがミソなのです。


 なお、作中のジョーカーは、直前のバットマンが言った、
「我々の関係を、殺し合いで終わらせたくないんだ」
「どんな不幸がお前の人生を狂わせたのか、それは知らない。だがもし私がその場にいれば……お前の力になれたかもしれない」
「だからもう自分を追いつめるな。苦しみを一人で背負い込むな」
「我々が殺しあう理由などない」

 という、一連の真摯なセリフを聞いたことで、このジョークを思い出しています。

 つまりクレイジー極まりないジョーカーに対し、それでも「我々が殺しあう理由などない」と手を差し伸べようとするバットマンの提案は、実は「光の梁を渡れ」という1人目の患者と同じくらい、クレイジーで常軌を逸した発言に過ぎないことを示してるわけですね。

 ですがジョーカーは、その提案をけして受け入れません。なぜなら提案者であるバットマンはクレイジーな奴であり、そんな奴を信じて光の梁を渡るのは、頭のイカれた奴だけだからです。

 かくて、この2人の気狂いの間の溝は、永遠に飛び越えられることはないのでした。
  
  



 ……てな感じに、オレはあのジョークを解釈してるのですが、どうか。

「いやその理屈はおかしい」等、意見をお持ちの方は、コメント欄にいただければ幸いです。

 以上。
  
  
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今回引用した日本語版のセリフはこちらの単行本より。
  
  
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こちらは今年頭に出た新装版ハードカヴァー。
アーティストのブライアン・ボランド自身が彩色を1からやり直してて、質感がむやみに向上してます。
オリジナル版と比べてみるのも一興(とりあえず、上のオリジナル版の表紙と見比べてみ?)。

  
  
※追記:まさか、これ書いた後で「新装版」の方が邦訳版で出るとは思わなかった。
  
  
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タグ:アメコミ講座 邦訳コミック

コメント

*

ども!はじめまして!
本当に適切で素晴らしい解釈です。きっとJokerがこの最後のジョークを思い出したのは次のBatmanの言葉だったでしょうね。

「だがもし私がその場にいれば……お前の力になれたかもしれない」
Jokerからしてみれば、「何ぬかしてんだ、お前はいたじゃねぇか。」ってやつですね。でも、それによって皮肉にも妻が好きだったジョークを思い出してしまうとは。

これは僕の解釈なのですが、この物語は何度もループしているような気がするんです。それは今までの幾度となく行われたBatmanとJokerの戦いの根底を描いているような気がするからです。

イカレたイギリス人である、アラン・ムーアとブライアン・ボランド。最高です

*

>Joshさん
はじめまして。そしてすいません、レスのほう遅くなりまして。
丁寧な感想ありがとうございました。
割りとこう、肯定的なコメントをいただけまして、安心しておりますが。
キリング・ジョークは短くて、物語の解釈のふり幅が広いんで
各読者ごとに目の付け所が異なってたり、
「ここは自分はこう解釈している」的な意見を持っているのがいいですね。
  
……ちなみに自分はこないだ出た新版の解説を読むまで、ラストで
バットマンがジョーカーの首に手を伸ばしてることに気づいてませんでしたが。
……この機会にもっかい読み返してみるかな。

*

いやーー最高の解釈だと思います。頭の硬い原理主義たちはうるさいですけどね、僕は今までいろいろサイトで見た中で最高の解釈だと思いました!

本当に、この幅って残念ながらアメリカの作家には無い所なんですよね。やはりBatmanを英雄として描きたい衝動があるのでしょうかね?

おおお!僕は最後に笑っているのは首ではなく、腕だと思ってました。あまりにも可笑しくて一緒に笑って腕つかんじゃっている感じかなっと。...すいやせん。

*

>Joshさん
重ね重ね肯定的なコメントをありがとうございます。
あんまり人から肯定されるのは慣れてないんでどんな顔をすればいいのかわからないですが。

他の作家の「幅」は、作業時間とか&メインの読者が子供も含まれるとかで
あまりたくさん寓意なりを盛り込めない&曖昧さよりも明快さが優先される……とかですかね。

あ、あとオイラもずっと肩を掴んで笑いあってるものと思ってました……。

*

なんと言うか脱帽です
目から鱗が出るくらい納得しました

*

感想ありがとうございます。
なお、このジョーク自体の解釈は、大筋あってるかと思いますが、このジョークの当てはめ方、たとえば「向こう側に渡った男=バットマンなのか?」といった細部に関しては、自分の解釈で正しいかは議論の余地のあるとこりだったりします。

↓こちらのブログの「キリングジョーク精読」の記事なども併せて読んで、ご自身なりの解釈を考えてみてください。
http://d.hatena.ne.jp/HowardHoax/20100807

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