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●リメンバーナインティー、な日々。

2012.02.17 Fri

 こう、ブログ更新したいなぁと思ったけど、書き上げたテキストが、玩具だのプラモとかの話だったので、「アメリカン・コミックスのブログであるのに、久々の更新でこーいうのもアレであるな」と思ったので、ボツにしてみた(まぁ、その内リサイクルする)。

 っつーわけで、アメリカン・コミックス絡みのネタを書こうと思ったけど、最近のアメリカン・コミックスをロクに読んじゃないので、オイラが最近ブームにしてる1990年代ネタでお茶を濁してみようか、という。


▼どうでもよい豆知識:「当時のマーベルの発行部数の記録を塗り替えた」の、巻:

 こう、1990年代にアメリカン・コミックスの紹介記事とか、邦訳コミックスの巻末記事とか、ソニーが出してたオシャレアニメ雑誌「AX」のコラムとかで、イメージ・コミックスなり、当時のスターアーティストなりを紹介した記事を読んでたときに、ですな。

 それらの中の、トッド・マクファーレンのプロフィールで、「マクファーレンの『スパイダーマン』創刊号は、当時のマーベルの発行部数の記録を塗り替えた」なんて記述を、まあよく見かけたじゃないですか。ないですか。――ま、とりあえず、「あった」ことにしてください。

 でー、一方で、ジム・リーのプロフィールを読んでも、「リーの『X-メン』創刊号は、当時のマーベルの発行部数の記録を塗り替えた」とかいう記述があったじゃないですか。――ま、とりあえず(略)

 さらにはロブ・ライフェルドのプロフィール(まあ、当時ですらこの人のプロフィールが載るのはレアでしたが)を見てもね、「ライフェルドの『X-フォース』創刊号は、当時のマーベルの発行部数の記録を塗り替えた」なんて記述があったりして。――ま(略)

 要は、当時見かけたマクファーレン、ライフェルド、リーの3人のプロフィールで、一様に「当時のマーベルの発行部数の記録を塗り替えた」なんて書かれてたんですよ。ご記憶あるかは知りませんが、ま、とりあえず「そんな気がする」程度に思ってください。


 で、オイラ個人はね、当時、そうした記述を見かけるたびに、「発行部数記録の大安売りだな」とか思いつつ、「なんで“頂点は1人”なはずの発行部数の記録保持者が3人いるねん」とか首を捻ってたですわ。

 ま、首を捻ってはいたもののですね、それらの詳細について調べるでもなく(当時はインターネット黎明期でダイヤル回線でテレホーダイなモンで、なんかあったらネットで検索、とかいうこともしにくいし。そもそもGoogleすらなかったしな!<1998年創立なのよ)、「ま、どうせ洋画の宣伝の“全米ナンバー1!”みてぇに、なにかしらのレトリックで、3人とも記録保持者ということにしてんだろ」とか結論づけて、その後、気にするのを辞めてたんですが。


 で。

 最近、なんとなくマクファーレンについて調べてたら、例の「発行部数の記録を塗り替えた」件について、触れてる資料を見つけてな。

 それを読んだら、「ああ、こういうことか」と納得できたので、そのことについて言及してみようと思った次第。前置き長くてすみません。

 いやウスウス推測してるでしょうが、要は最初にマクファーレンがそれまでの発行部数を塗り替えて、その1年後にライフェルドがマクファーレンの記録を塗り替えて、さらにその後リーがライフェルドの記録を塗り替えた、という、「順番に塗り替えてった」という、そんだけの話だったんですが。


 とりあえず、淡々と事実だけを語ってきますが。


・マクファーレンの「発行部数の記録を塗り替えた」ハナシ:

 まず1990年に、当時のスーパースター・アーティスト、トッド・マクファーレンがライター、アート(ペンシル&インク)双方を担当するというコンセプトの『スパイダーマン』誌が創刊されたワケですが。

 ちなみにこの雑誌は、当時、『アメージング・スパイダーマン』誌のアーティストを担当して高い人気を博していたマクファーレンが「好きなように絵を描きたい、それを実現するには僕がライターになるしかない!」とかいいだしたのを受け、当時の担当編集者ジム・サリクラップが立ち上げたという、非常にバブリーな経緯によって創刊されてます。

 最近、アメリカン・コミックスを読み出した諸兄にはピンと来ないでしょうが、この当時のトッド・マクファーレンというアーティストは、それはそれは大人気だったのですよ。奴が「あれしたい」っていったら、それが大企業マーベルの注力する企画として動いちゃったりするほどに。

 でー、この『スパイダーマン』誌の創刊号は、265万部も発行され、単一のコミックブックでの発行部数の記録を塗り替えたのでした。ね? スーパースター・アーティストでしょ?

※ちなみにこの数字は発行部数であって実際に売れた数ではないことは注意な。


 まあ、レアな「プラチナム・エディション」を含む全7バージョン(違うのは表紙だけで中身は一緒)が「コレクターズアイテム!」的なアオリと共に発行されたんで、投機目当てのコレクター(当時はそういう人種がいたのだよ。信じられないだろうけど)が、1人で何冊も何十冊も発注したために発行部数が伸びた、という、バブリーな背景があったことは述べときます。

※メインストリームのアメリカン・コミックスは、発行の2ヶ月前にコミックショップなぞが問屋に必要な部数を発注し、それを受けて出版社が発注のあった分だけ刷る、とかいうスタイルなので、発売日の朝から量販店の前で並んだりしなくても、割合、欲しいだけの冊数が手に入ります。――いや、「限定○○○○部!」とかいうコミックは、さすがに各ショップへの割当量とかが決まっちゃいますが。ま、普通のオンゴーイングシリーズの第1号なんてなぁ、注文があればあるだけ刷ります(まあ、『スパイダーマン』も一番レアなプラチナムエディションだけは部数限定だった気がしますが)。


 ああ、ちなみに2012年現在の「バリアント・カバー」(「○○冊注文するごとに1冊、人気のアーティストが描き下ろした特別な表紙のコミックが配本されるよ!」とかいうアレ)と異なり、この『スパイダーマン』の7種類のバリアントカバーのアートは1種類だけです。

 この「全部同じ絵」が描かれたカバー群の「何が違うか」といいますと、「背景の印刷に使われてるインクが違う」のです。……いや、マジで。

 参考のために内訳をいうと、まず、普通のインクで刷られた通称「グリーンカバー」、次にシルバーの特色インクを使って刷られた「ブラックカバー」、でもって第2刷目に、ゴールドの特色インクを使った「ゴールドカバー」、それに箔押しの「プラチナム・エディション」の4種類。

 このうち、グリーンとブラックは「コレクターズ・アイテム」と印刷されたポリバック(まあ、ビニール袋ね)に封入されている別バージョンがあり、一方でゴールドカバーには、レアなUPCコード(バーコードのことな)が印刷されているバージョンも有ったので、それらのバージョン違いを合計すると全7バージョンになるわけで。

※当時、ポリバック入りのコミックを「保存用」「読む用」で2種類買った経験のある人、手を挙げなさい。

 はーい(<手前ぇじゃねぇか!)

 ……すいません、『ゴーストライダー』の「ライズ・オブ・ミッドナイト・サンズ」クロスオーバーの全話を「保存用」に買って、「読む用」にTPB『ライズ・オブ・ミッドナイト・サンズ』買いました……。あと神保町の中野書店で『ゴーストライダー』アニュアル第1号(元はポリバックに封入されてたけど、開封済み中古だった)を買って、その後に未開封のものを買い直しました。……ちなみに当時のポリバックは、光にあて続けると分解するエコな素材だったんで、暗所に保存するのが基本ですね。

 画像検索したら、こちらのホームページに全バージョン掲載されていたのでリンクしてみる(ね、同んなじ絵でしょ?)。

※なお、リンク先の右の方にある「クロミウムカバー」は後年(1990年代後半頃)、「過去の名作をプラスチック製のキラキラ光るカバーにした“クロミウム・エディション”として再版する(中身は広告が自社広告にさし替わったぐらいでほぼ同じ)」とかいう、ワケの解らないブームの頃に出たもの……だと思う。

 思い返すと、本当にワケが解らないよな、クロミウム・エディション。いや、俺も当時鳴り物入りで立ち上がったクリフハンガー・レーベルのコミックス(『デンジャーガール』『バトルチェイサーズ』『クリムゾン』『スチームパンク』)の、各創刊号クロミウム・エディション買ったけどさ(<オイ)。あと、DCミレニアム・エディションの『ジャスティスリーグ』のクロミウムも買ったな。

 ……閑話休題。

 ま、そんなわけで、マクファーレンは「バリアントカバー」の恩恵もあって、『スパイダーマン』創刊号を265万部も刷ってもらえたのですよ、と(<今までグダグダ書いてた話が1センテンスでまとまったぞ、オイ)。


・ライフェルドの「発行部数の記録を塗り替えた」ハナシ:

 が、この当時のスーパースター・アーティストはトッド・マクファーレン1人ではありませんで。そう、あのレジェンダリー・スーパースター・コミックス・アーティスト、ロブ・ライフェルド大先生も、当時のマーベルには居たのですよ! ですよ!

 な、わけで翌年、ロブ・ライフェルド脚本&作画(脚本はファビアン・ニシーザと共著)の超ホット・コレクターズ・アイテムな『X-フォース』が創刊されまして。この第1号は当時のXーメン・フランチャイズの大ブームと、スーパースター・コミックス・アーティスト、ロブ・ライフェルドの人気もありまして、実に390万部もの部数を計上しました。

 当時の無闇なX-メン人気もあったとはいえ、マクファーレンの記録に100万部以上も差を付けるあたり、さすがにレジェンダリー・スーパースターですね。――最近、アメリカン・コミックスを読み出した諸兄にはピンと来ないでしょうが、この当時のロブ・ライフェルドといえば、朗らかな笑顔と大言壮語と勢い重視のアートで知られ……今と同じじゃねぇか。

 ああ、ちなみにこっちは、5数種のトレーディング・カードのいずれかが封入されているという、AKB商法(こっちが先やがな)なソレが執られており――ああ、違うのはカードだけで、表紙も中身も一緒ですよ?――更に背景にゴールドインクが使われた第2版(こっちにはカードは付かない)の計6バージョンが出て、やはりコレクターが複数冊買っていく感じで、部数を伸ばしました。――ちなみに、このゴールドカバーは1万部しか刷られなかったので、『X-フォース』創刊号の各バリエーションの中では一番レアリティが高いらしいぞ。

 ――どうでもいいけど、このころのマーベルって、第2版をゴールドインク(微妙に発色が鈍いのよね)で背景を塗りつぶす、というのをなんでか多用してたよね。『ゴーストライダー』第15号とか(ピンポイントな例示過ぎる)。

※薄々お気づきでしょうが、当時の筆者は『ゴーストライダー』にドハマリしてて、ポリバック入りのコミックスを買って未開封で壁に飾ったり、複数のカバーを押さえたり、「ミッドナイト・サンズ」関連誌全部買いしてたりしてました。


・リーの「発行部数の記録を塗り替えた」ハナシ:

 でーまぁ、このレジェンダリー記録も、ですな。当時のマーベル最強のスーパースター・アーティスト、ジム・リーが、当時のマーベル最高峰のコミック『Xーメン』の新シリーズ創刊号で追い抜くわけですが。……しかも、『X-フォース』創刊の、わずか2ヶ月後に。

 っつー訳で、ジム・リー作・画の(※最初のストーリーアークの脚本はクリス・クレアモントと共著)『Xーメン』創刊号が、実に750万部という、ライフェルドの記録を大幅に上回る(ほぼ倍)数字を打ち立てます。

 さすがに、当時のマーベルの看板雑誌(今、『アベンジャーズ』が看板雑誌なのになじんでる読者は違和感あるのかしら)である『X-メン』に、「表紙をチョロリと描いただけで売上げが伸びる」スーパースター・アーティスト、ジム・リーの相乗効果たるや、スサマジイものですな。ウォーズマンのベアークロー二刀流並の数字のインフレですわ。

※一説によると、750万部のうち、実売は300万くらいらしいけどなー。

 ――ああ、例によってこちらも、5バージョンのカバーが発売されてますね。ジム・リーが描き下ろした横に長いイラストを4等分し、それぞれ異なる表紙として発売した通常版4バージョン(全バージョン集めて順番に表紙を並べると、1枚の絵になるよ!)と、それら表紙をひとまとめにした横に長~い表紙(折りたためるよ!)を持つデラックス版の、計5バージョンです。

こちらのホームページで全バージョンの絵が見られます。

 なお、このデラックス版は上質紙を使っており、質的にもデラックスになっております。――ただし、通常版が各1ドルだったのに対し、こちらは3ドル95セントと、通常版約4冊分の値段なんですが。

 ちなみに、『X-メン』フランチャイズが上質紙を恒常的に使いだすのはもう数年後、「リージョン・クエスト」の頃からですな。この頃のマーベルは「『X-メン』フランチャイズは上質紙を使ったデラックス・エディションと、普通の紙を使ったニューススタンド版の2種類を出すことにするよ!」とかいうワケの解らない政策をとってまして(中身は紙以外同じで、ニューススタンド版の方がやや安い)、それが気づいたらニューススタンド版も上質紙を使うようになってましたな。

 当時、オイラはデラックス版で買い続けようとしたんだけど、時々間違ってニューススタンド版も買っちゃって、泣く泣くバックナンバーでデラックス版を買い直したなぁ。でー、デラックス版を買い直したぜ! と思ったら、よくよくクレジットを見たら、「第2刷」だったりしたんで、ムキになって初版買い直して、都合3冊手元に残ったりな(<我ながら無意味なこだわりだと思う。ちなみに『ガンビット&エクスターナルズ』の第1号。<よほど悔しかったんでいまだに記憶に残ってやがる)。


 っつーわけで、1990年代の適当なトリビアをダシにしつつ、1990年代の適当なる思い出を閑話として挟み込むという、俺得なエントリ、これにてオワル。
  
  
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