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●『総天然色AKIRA』の違和感、のハナシ。

2012.03.29 Thu

 そういうわけで、前フリしてから大分経っちまいましたが、『総天然色AKIRA』についての、適当なエントリを書こうと思う。

 ほら、いつのまにか大友克洋が再起動するとか原画展するとか、微妙に盛り上がってるので。尻馬に乗って客を引き込むぜー、と(適当)。


▼そういうワケで:

 まあ、端的にいえば、『総天然色AKIRA』に「ここ、訳が変じゃね?」っていう箇所があるので、それを指摘しつつ、「どこで間違ったか」を考察していこうという、まあ、いつもの俺だけ楽しいエントリですが。


 具体的には、『AKIRA』第1巻のクライマックス、鉄雄の攻撃を受けた金田が、“特別製の”クスリを落としてしまい、それを鉄雄が飲んじゃおうとするシーンですが。

 ――要するに、ここの2ページね(講談社版『AKIRA』第1巻より転載。右開きの本を左から並べてくのは違和感あるなぁ)。


 ここの流れのポイントは、金田と大佐はこのカプセルが超能力者用の特別なものであり、「常人が飲んだら死んでしまう」程の劇薬であることを知っている。ただ鉄雄だけがカプセルの詳細を知らず、単なる(金田がいつも持ち歩いてる)興奮剤のカブセルだと思ってて、頭をスッキリさせるために、躊躇なく飲もうとしている、というトコですね(※筆者註:『AKIRA』のストーリーを一から説明するのは不毛なので、各自、ストーリーを知っているものとして、最低限の説明ですませます)。


 で。

 同じシーンは『総天然色AKIRA』だとこのようになってます(『総天然色AKIRA』第1巻より転載)。――一応いっときますが、『総天然色AKIRA』は左開きなのでページが逆版になってるのね。

 
 その、問題は、この『総天然色AKIRA』版の2ページ目3コマ目の鉄雄のセリフ、

「お前さんだったんだな ずっと持ってやがったんだ」

 なんですが。

 このセリフだと、ニュアンス的に「お前さんだったんだな(特別製のカプセルを)ずっと持ってやがったんだ」的に読めて、まるで鉄雄が「特別製のカプセル」の存在を知っていたかの様になっちゃうと思うんですよ。

 ……そうなると、物語の意味合いが変わってしまうし、「鉄雄が知らずにカプセルを飲んじゃう」という、第1巻の流れが一気に収束していくこのシーンの妙味が台無しになってしまうと思うのですが、どうでしょか。


 でー、オイラ、『総天然色AKIRA』の第1巻が出たとき(2003年って、もう9年も前か!)からね、このシーンに違和感を感じてて、同書が翻訳の定本としているエピック・コミックス版『AKIRA』では、このセリフはどうなってたのかなぁ、などと思って、まぁ、古本屋でエピック版『AKIRA』を見かけたときに購入してたんですが。


 ……エピック版を購入して、「いつか検証記事を書きたいなぁ」などと思って9年目とか、呑気にも程がありますね。
 つか、「今度こそ記事にするぞ! ……しまった、エピック版なくした! しょうがねぇ、古本屋で買うか!!」とかいうのを何度か繰り返したんで、ウチには該当号が3冊ほどあります(どうでもいい)。


 でー、こちらに引用するのが、そのエピック・コミックス社版『AKIRA』第6号より、該当シーンの米語版。


 こちらでは、鉄雄のセリフは

「IT WAS YOU, WASN'T IT?! YOU HAD IT ALL ALONG.」

 となっています。

 日本語訳すると、まんま『総天然色AKIRA』の

「お前さんだったんだな ずっと持ってやがったんだ」

 って具合になりますね。

 でもって、1ページ目にも注目して欲しいんですが、最後のコマで鉄雄がクスリのことを「THE DRUG」って、定冠詞つきで呼んでるんですよね。このことからも、多分エピック版の翻訳者は、この場面で鉄雄が「特別製のクスリ」のことを知っているという文脈で、米語訳しちゃったんじゃないかと、思います。

 要は、ここのシーンは、『総天然色AKIRA』の邦訳の際にニュアンスが変わったのではなく、エピック版で米語訳されたときに、ニュアンスが変わっちゃったのだな、と。

 それが確認できてスッキリしたぜ、と。


 ――いや本当は全然前にスッキリしてたんだけど、それを記事にするのに9年かかったぜ! <いばるな


 ちなみに、こないだのエントリで、現在コーダンシャ・コミックスUSAから出ている米語版『AKIRA』のテキストでも、エピック版の訳文が流用されていると書きましたが。

 ……ええ、実はコーダンシャ版『AKIRA』の該当のシーンも、エピック版そのままなんです(コーダンシャ・コミックスUSA版『AKIRA』第1巻より転載)。


 ……つまり、エピック版『AKIRA』第6号が発売された1989年以来、実に23年間、アメリカの読者はこのシーンを「ちょっと違うニュアンス」で読んじゃっている、というわけですね。

 っつーか、今後もここのセリフが直されることはないと思うんで、アメリカ人はこのシーンのニュアンスをずーっと取り違えたまま『AKIRA』を読み継いで行くのだろうという、割とアレな事実が。うぬ。


 とりあえず、取って付けたような結論としては、大友克洋が復帰するぜ! 世界的なニュースだぜ! とかお祭り騒ぎに便乗しつつ、セリフをオリジナルのニュアンスに近づけた「新訳版」米語版『AKIRA』とか出さね? とかで、どうか(知らぬ)。

 やっぱさ、なんのかんのいっても「俺達ァ健康優良不良少年だぜ」っていうセリフ回しとかはね、アメリカの人らにもそれに近いニュアンスで読んで欲しいじゃん、と。

 ――いや、思うだけで、別にここから何らかのアクションを起こすわけでもないのですが(最悪だ)。

 そんな感じに、適当に、オワル。
  
  
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タグ:アメリカのマンガ

コメント

*始めまして。

ちょっと、古い記事ですが興味深く読ませていただきました。

ひとつ気になった点があって、原作と国際版では爆弾が落とされた西暦が違うのですが理由があるのでしょうか?気になってしょーがないのです。

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