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●スーパーボーイは、ジェリー・シーゲルの著作物だった。その2

2007.03.21 Wed

▼そもそも、なんで「スーパーボーイ」は、シーゲルの著作物なのか

 うぃす。

 続きですが。

 さて、前のエントリの終わりの方で、“カートゥーン版『リージョン』は、「スーパーボーイ」の著作権に触れる物ではなく、あくまで「スーパーマン」の著作権の延長線上にあるものになるよう、配慮されている”とか言った事例を紹介しましたが。
 この例でも解るように、現在、「スーパーボーイ」と「スーパーマン」の著作権は、それぞれ別物と見なされています。なぜだか。

 その、通例ならば「スーパーボーイ」という作品、キャラクターは、「スーパーマン」のコミックから派生した物ですので、「スーパーマン」の著作権に含まれることになります。当たり前ですが。
 が、とある“諸事情によって”、「スーパーボーイ」と「スーパーマン」の著作権は、別個の存在と見なされてます。それも、半世紀以上前から。

 さて、こっから話はいきなり70年近くさかのぼらせてもらいますが。

 ……長くなるんで覚悟しとくですよ?

 そもそも、ジェリー・シーゲル<Jerry Siegel>(脚本担当)とジョー・シャスター<Joe Shuster>(作画担当)の2人が創造した「スーパーマン」が、初めて出版されたのが1938年、DCコミックス社(※)の『アクション・コミックス<Action Comics>』創刊号でのことでありました。

※正確には、この当時の『アクション・コミックス』の版元の社名は、「DCコミックス」あるいは「デテクティブ・コミックス」ではなく、「ナショナル・アライド・パブリケーションズ」だったかと思いますが。面倒なので、この原稿内では、年月に関わらず、「スーパーマンの版元である所の例の出版社」については、「DCコミックス」の通称で統一します。ご了承ください。

 なお、この掲載と130ドルの原稿料(『アクション』創刊号に載った「スーパーマン」は13ページだったので、ページ単価10ドルですな)をもらうにあたり、シーゲルとシャスターは、DCコミックスとの間に、ある契約を交わしました。それは、「スーパーマン」の権利をDCコミックスに譲渡することと、以降10年間、シーゲルとシャスターがDCに作品を供給すること(専属契約みたいなもんか)という、後々に遺恨を残すことになるモンでした。

 ちなみに、シーゲルとシャスターは、この以前にもDCコミックス社の雑誌に「スラム・ブラッドレー<Slam Bradley>」や「バート・レーガン:スパイ<Bart Regan, Spy>」などのコミックを載せてもらっており、その際にもこのような形の、著作権をDCに渡す形の契約を結んだ上で、同程度の原稿料をもらっております。
 つまり、この時点で、シーゲル&シャスターは、著作権をDCに委譲することに関しては、特に文句はなく、むしろ、この契約を結んだDCコミックスの社長ジャック・リーボウィッツは「こんな荒唐無稽なコミックが売れるのか」と、嫌がってたようで。

 余談ですが、この、『アクション・コミックス』は、シメキリまでロクに時間が無くて、そのくせ営業が売り込みをかけてたおかげで、発売月を伸ばせず、かなりタイトなスケジュールで編集されてたそうです。
 この「スーパーマン」のコミックにしても、元もとは、DCと関係のない、新聞マンガのシンジケーション(新聞マンガの供給を司る会社)相手に新聞マンガを供給する仕事をしていた、M.C.ゲインズ<M. C. Gaines>のオフィスで打ち捨てられていたモンでして。
 『アクション』の編集者、ヴィンセント・スリヴァン<Vincent Sullivan>に「何でもいいから完成原稿よこせ」とか言われたゲインズのアシスタント、シェルドン・メイヤー<Sheldon Mayer>が「じゃ、これで」とか転送してきたのが、新聞マンガ用の原稿として描かれていたスーパーマンの原稿だったそうですわ。
 で、スリヴァンは、その原稿――新聞マンガのフォーマット(横に細長い短冊っぽい形)で描かれていた――をシーゲルらに送り返し、
「これを1日でコミックブックの版型に合わせて戻したら、掲載してあげるけど、やる? っつーか、やって頂けないと俺が困ります」的に依頼。
 シーゲル&シャスターは、お兄ちゃんたちと一緒に、元の原稿を切り張りして、13ページの原稿に仕立て直したそうですが。

『スーパーマン・アーカイヴス』とかで、リプリントされた「スーパーマン」第1話を読めば解りますが、全部のコマの高さ、大きさが均一な上に、各段の間隔が、結構広く取ってあって、結構奇妙な印象を受けるのですわ。

 閑話休題。

 さて、シーゲルとシャスターが、「いつも通り」に権利を売り飛ばし、ジャック・リーボウィッツが割と嫌々買い取った「スーパーマン」のコミックは、あに図らんや、その「荒唐無稽さ」が、読者の子供たちに受け、空前のヒット作品となります。
 調子に乗ったDCコミックスは、「バットマン」などの後続のスーパーヒーローものを送り出し、また、他のコミック出版社も、スーパーヒーローものに着手するなど、まぁ、「スーパーマン」のヒットは、コミック業界そのものを一変させていきました。

 やがて、DCコミックス社は、自分らが権利を持ってるのをいいことに、「スーパーマン」の新聞マンガ、ラジオドラマ、アニメーション映画に実写映画と、今で言うマルチメディアな具合に「スーパーマン」を展開し、更にはスーパーマンのイラストの描かれたバッジや弁当箱、スーパーマン・コーンフレークにスーパーマン・ピーナッツバター、スーパーマン光線銃等々の関連商品で多大な収入を得ていきます。
 が、シーゲルとシャスターは、前述のように「スーパーマン」の権利をDCに売却していたため、彼らはそれらの関連作品からのロイヤリティを得ることはできませんでした。

 さて、この時期シーゲルは、その脳髄を振り絞って無数のスーパーマンの物語を考えていったのですが、その中に、「スーパーボーイ」なるキャラクターの登場するストーリーがありました。
 ただし、この時シーゲルが発案したスーパーボーイの物語は、「責任感を身につける前のクラーク・ケントが超能力でイタズラをする」といった具合で、その後正式に誕生することとなる「スーパーボーイ」とは異なるものだったようですが。

 ともあれシーゲルは、DCコミックスに、他のコミックの案と共に「スーパーボーイ」のアイデアを提出します。が、DCコミックスの編集者は、「スーパーボーイ」の案はボツにします(読者の子供たちに良い影響を与えない、そのような話はスーパーマンの値打ちを減ずる、といったような理由による模様)。
 シーゲルは、その後、内容を変えつつ、幾度も「スーパーボーイ」のアイデアを出したようですが、やはり、DC側は、採用しませんでした。

 やがて1943年。この年シーゲルは、アメリカ陸軍に加わり、第2次世界大戦に従軍します。この結果、シーゲルに代わり、ビル・フィンガーやドン・キャメロンといったコミック作家らが、「スーパーマン」のコミックのシナリオを担当することとなります。
 こう、現代の日本的な価値観ですと、コミックのクリエイターが書けなくなった場合、連載は中断されるモンですが。「スーパーマン」のコミックの権利は、前述しましたように、クリエイターであるシーゲルではなく、出版社のDCコミックスに所属してますんで、それまでシナリオを担当していた人間がどっかに行こうが、単に担当者を換えて、連載を継続するだけでした。

 さて、シーゲルがお国のために、色々とやっていて、コミックに関わることができなかった1944年(ただし、シャスターのスタジオと連絡を取ってはいたようですが)。DCコミックス社のアンソロジー誌、『モア・ファン・コミックス<More Fun Comics>』第101号にて、新シリーズ「スーパーボーイ」の連載が始まります。このスーパーボーイこそは、「少年時代のクラーク・ケントが、おなじみの衣装を着て、スーパーボーイとして、スモールヴィルの町の平和を守っていく」といった具合な、今の我々がよく知る「スーパーボーイ」そのものでありました。
 無論、この企画には、戦地に赴いていたシーゲルは関わっていません(多分。第1話のみ、シーゲルがやっつけで書いた脚本あるいはアイデアをベースにしていた、との説もあり)。一方でジョー・シャスターは、依然、DCでコミックを描いておりまして、「スーパーボーイ」も彼のスタジオが手掛けました(この当時、シャスターは持病の眼病が悪化して、仕事の大部分は、自身のスタジオで抱えているゴーストに任せていたようですが)。

※ちなみに『モア・ファン・コミックス』第101号ですが、2000年度にDCが、自社のマイルストーンとなるコミックを復刻する「ミレニアム・エディション」企画の1冊として再版されてますんで、今でも安価で手に入れられます。はい。

 さて、1945年。なんと、この年、第2次世界大戦が終戦します(<ざったいので、ボケとか入れないでください)。
 シーゲルら戦地から戻ってきたコミック作家、それに編集者らは、前職への復帰を求めますが、それぞれのポストは、後任の人材が不動の地位を確立してる上、戦後のコミック市場が、往時の勢いをなくしていたこともあり、なかなかスンナリいかなかったそうですが、まぁ、これは余談。
 まぁ、シーゲル本人は、例の「10年間の専属契約」のおかげで、普通にDCコミックスに復帰できたようでしたが。

 やがて、この10年契約がそろそろ消えようという1947年4月。
 作品の内容を編集者に制限されたり、
「スーパーマン」のマーチャンダイジングの収益がロクに還元されなかったり、
 勝手にスーパーボーイを創造されたり、
 ……と言った具合な、DCコミックスによる自分たちへの不当な扱いに対し、遂に業を煮やしたシーゲル&シャスターは「そっちがその気なら、ケンカを売ったるわい」とばかり、DCコミックス社に対しての訴訟を起こします。
 彼らが求めたのは、「スーパーマン」に関する全ての権利を取り戻すことと、500万ドルの損害賠償でした。

 ちなみに、ジェラルド・ジョーンズ作の名著、『Men of Tomorrow: Geek, Gangsters, and the Birth of the Comic Book』によれば、この時、シーゲル&シャスターは、ボブ・ケーンと接触し、彼らの訴訟に協力するよう、求めたそうです。ボブ・ケーンは、ウチのブログを読みに来てる様な、奇特なアメコミファンならご存知でしょうが、「バットマン」の作者です。
 シーゲルらと同様、DCに「バットマン」の著作権を譲渡していたケーンと組むことで、彼らはこの訴訟を、より大ごとにしようと考えてた模様ですな。
 これに対して、コミック作家として以上に、マキャベリストとしての才能にあふれたケーンは、シーゲルらに適当な返事をしておいて、即座にDCコミックスのオフィスに向かったそうです。で、ケーンは、ジャック・リーボウィッツに対し、
「シーゲルとシャスターが、あんたたちを訴えようとしている。これ以上面倒ごとを増やしたくなかったら、俺との契約を更改しなさい」的に申し出たそうで。
 これに対してリーボウィッツが
「スーパーマンもバットマンも契約を書面で交わしてる以上、ウチのもんなんです。君と再契約とかしなくても大丈夫です」
とか高をくくった返事をするや、
「実はワシ、あの契約を結んだ時は、未成年だったねん。故に、あの契約は無効やで?」
とかいう、限りなくウソ臭い切り札を出します(っつーか、たぶんウソだったと思いますが<あんた、本当にケーンが嫌いなのな)。
 最終的にリーボウィッツは、再契約に応じ、ケーンは「バットマン」の権利を部分的に取り戻した上に、以降の数年間、相応の原稿料で、DCにコミックスを供給する旨の契約も交わしたそうですから、恐るべし(<この時期ケーンは、作品のほとんどをゴーストに描かせていたので、専属契約は、原稿料さえ相応の額をもらえれば、むしろドンと来いだった)。
 で、この裏取引によって自身の権利を確保できたケーンは、適当な理由をつけて裁判への協力を断ります。

 めでたし、めでたし(ケーンが)。

 さて翌1948年、この裁判は結審します。
 ニューヨーク州立裁判所のJ.アディソン・ヤング<J. Addison Young>裁判官は、シーゲルとシャスターの主張を退け、くだんの契約が有効なものであり、「スーパーマン」の権利はDCコミックスが所持している、との判決を下します。
 この裁判においてDCコミックス側は、腕利きの弁護士を雇い、例の契約書をはじめ、数々の記録を書面にて残していたのに対し、シーゲルとシャスターは、シーゲルが、従軍中に出会った友人を弁護士にして、書面よりも口頭での弁論が主だった、ってんで、まぁ、ハナから勝ち目の無い裁判でありました。

 が、その一方でヤング裁判官は、「スーパーボーイ」については、ジェリー・シーゲルが「スーパーボーイ」の著作権の所持者である、という、意外な判決を下しました。

 これは、過去にシーゲルが提出した「スーパーボーイ」のアイデアをボツにし続けたにも関わらず、シーゲルが兵役にある間に、「スーパーボーイ」を生み出したDCコミックス社の行為が「不公正である」と、みなされたためでした。

 なお、この判決が下された直後、シーゲルとシャスターは、DCに対し「スーパーマン&スーパーボーイ」に関する権利を、10万ドルでDCコミックスに売却する旨の和解案を提示され、渋々同意しました。
 10万ドルっつーと、まぁ当時としちゃ相当な額でしたが、そのほとんどは弁護士への報酬に消えました。

 ちなみにシーゲルらの弁護士は、この裁判で得た金を元手に、ハリウッドで映画プロデューサーとして大成したそうです(一説では、この弁護士は、DCコミックス側とも通じてて、さらに金を得ていたとか、いないとか<あまり本気に取らないこと)。

 めでたし、めでたし(シーゲル側の弁護士が)。


 えー、長々と書いてきましたが、
“そもそも、なんで「スーパーボーイ」は、シーゲルの著作物なのか?”
 っつーことと、
“なんで「スーパーマン」と、「スーパーボーイ」の著作権は別物として扱われてるの?”
 の、2点についての答えが、解っていただけたでしょうか。

 なぜなら、
「裁判で偉い人がそう決めたから」です。はい。

 っつーか、私見ですが、こういう「不公正」の是正に関しては、相応の金を支払うってのが普通じゃねぇかと思うのですが、なぜにヤング裁判官が、金ではなく、権利を丸ごとシーゲルに与えたのですかね。
 とまれ、ここでヤング裁判官が「スーパーボーイはシーゲルに権利が帰属する」と判決を下したことが、半世紀以上の後、強い意味を持ってきます。

 っつーことで、今日はこれまで。


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