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●アメコミの原稿料ってページ単価500ドルなんだって、というハナシ。

2013.07.03 Wed

 Captain YさんがTwitterで紹介してたパブリッシャーズ・ウィークリィの記事(この記事)が面白かった。

 けど、その記事の話をここでワガ物顔でするのも気が引けるので、まあこの記事については簡単に概要を説明する程度で、後はこの記事がリンクしてた別の記事についてダラリと語ろうか、というエントリ。

 追記:Captain Yさんと原稿料の話といえば、この記事も、本稿と合わせて読むといいやも知れぬ。


 クダンの記事の中身は、これが結構込み入ってて、元々は2008年頃に『ウォーキング・デッド』の作者であるロバート・カークマンが「みんな、クリエイター・オウンの作品を書いたほうが儲かるぜ」とか何とかいってDCとマーベルと仕事をしなくなって、一方で、当時マーベルからクリエイター・オウンの『パワーズ』(昔はイメージから出てたけど)を出していたブライアン・マイケル・ベンディスが「いや、あんたは例外ですから。『ウォーキング・デッド』なんて規格外の大ヒットじゃないすか」とか反論して、実際にコミックの原価と、問屋が発表してる受注部数を元に「何千部売れれば利益が出るのか」というミもフタもないラインを引きつつディベートした、ということがあってな(この記事)

 で、該当の記事は、そのディベートから4年がたった2012年現在ではどれだけのインディーズの作家が「儲けを出してるのか」ということを、もろもろの情報ソースを元にもっかい試算してみるという、実にまあ、アケスケな記事で(「4年間経って、全体的に利益を出してそうな部数のインディーズ・コミックスが増えてるぜ!」とかいう結論)。

※この記事には、コミックブックの部数あたりの原価(1000部しか刷れないと1冊当たり2.77ドルもかかるけど、1万部刷れば1冊66セントだって)とか、色々と興味深いデータが載ってるので、各自読んどこう(ナゲヤリ)。


 でで、この記事は、あちこちのソースから数字を引用しているのですが、そのうちの1つ、今回のエントリのタイトルである所の「アメリカン・コミックスの原稿料はページ単価500ドル」という奴は、グレン・ハウマン(Glenn Hauman)という編集者兼パブリッシャー、小説家のブログの記事が元になっていてな。

※ここでいう「アメリカン・コミックス」はメインストリームの伝統的なコミックスのこと、と一応いっておく。


 このハウマンは、米版Wikipediaのエントリを読む限りは、それなりにキャリアを積んだ編集者で、ほんでもってパブリッシャーとしても成功してる人でして。まあ、その人のいうことだから、割合的を射てる価格なんじゃないかと思います(適当)。

 で、クダンのハウマンのブログ記事によると、伝統的なカラーのコミックブックの1ページ分の原稿料の総額は、

・ライター:100ドル
・ペンシラー:150ドル
・インカー:130ドル
・カラリスト:90ドル
・レタラー:30ドル

 ってな具合になっていて、その総額が「500ドル」だそうで。

 まあ、会社の規模とか、担当作品の人気とか、使ってる作家の「格」とかによって、この数字は上下するわけで、結局はケース・バイ・ケースではあるのですが、「だいたい500ドル」ってのが一般的な感覚らしいです、と。


 感想としては、やっぱりコミックスの花形であるペンシラー&インカーというアーティストが1、2位で、3番目がライター、4番目がカラリストで一番最後がレタラーって感じなのね、と(見たまんま)。

 レタラーは作品によっては(セリフがクソ長いブライアン・マイケル・ベンディス作品とか)ページ単価30ドルじゃやってられないような気もしますが。いや、逆にベンディス作品だと、「キメのコマだけど擬音がない」とかいうページも多いから、楽なのかしら。

※つっても、こないだのエントリでも触れましたが、近年の大手出版社のレタラーは社内受けがメインなので、大手の場合は、多少、事情が違ってきてると思いますが。


 ちなみに、元記事のハウマンのブログだと「一番金をもらってるペンシラーだけど、月1冊担当して(150ドル×22ページ=)3300ドル。年収は39600ドルだけど、毎号の表紙のイラストは、別にギャランティが出るから、それも加味すれば年42000ドルくらい。ま、さほど大金持ちって訳じゃないね。ライターにしても、月1冊で2200ドル、彼らは表紙なんかを描いて収入を増やせないので、だいたい2冊担当することで、うまいメシを食ってる感じ」的なコメントを書いてるのね。

 ……個人的には、割といい金額もらえてると思うけど、「アメリカン・ドリーム」な大金じゃあない、って感じかね。

 ちなみに一般的なアメリカン・コミックスのペンシラーの月産生産枚数は22ページ前後だそうなので、彼らはライターのように2冊担当するってのは割と難しいみたい。

※まあ、これもケース・バイ・ケースで、一時期のマーク・バグリーとかロン・リムみたいに週22ページ描けちゃう作家もいるにはいる。

※無論、隔月で22ページが限界とか、年22ページで何とか、みたいな遅筆な作家(あえて名は出さない)もいる。


 昔、レジェンダリー大作家ロブ・ライフェルド先生が、「デビュー当時に僕がペンシラーとインカーを兼任してたのは、家計を支えるために、インカーのギャランティも欲しかったからだ」的なことをいってましたが(ライフェルドは諸事情により働き手がいなくなったライフェルド家を養うため、一念発起してコミック作家になったのだ!)、ペンシル+インクだとページ単価280ドルなんで、月1冊担当すれば280×22=6160ドルと、家族を養って余りある金額よね(実際、それくらいの金額をもらってたかは解りませんが)。

 ちなみに、近年割りと見かけるようになってきた「ペンシルの原稿にインクを入れず、直にスキャニングしてカラリング用の原画とする」とかいうスタイルのアートの場合、ペンシラーにはインカー分のギャランティは支払われないけど、「下描きの線を整理する」という作業に関して、多少のギャランティが発生するって、昔、タケシ・ミヤザワ先生がいってた。

 そういや、1990年代中頃のキース・ギフェン大先生は、ペンシルなしで、いきなり原稿にインクで描いてくという、豪快極まるアートスタイルでしたが、あれは、インカー分のギャランティしかもらえてなかったのかしら(どうでもいい)。

 まあ、ケース・バイ・ケースと(またそれか)。

 感想としては、なるほど。興味深い(社会人としてあまりに貧困な感想)。


 ……ま、この程度の感想で終わるのもなんなので、試しに「日本のマンガ」と比べてみようかね。竹熊健太郎式炎上商法で(そゆこというな)。

 こう、日本のマンガ家の一般的なページ単価は、「俺が聞いたところによると(<誰だお前)週刊少年チャンピオンの某大御所は3万円」「本宮ひろしは10万円(うそくせー)」「某社の4コママンガ誌の新人は6千円」とか、作家や出版社の「格」によって上下しますが、一般的な相場としては8千~1万円前後ですかね(異論は受け付けます)。

 まあ、今の米ドル相場にするとだいたい100ドル前後で(ファック円安!)、ペンシラー、インカー、ライターあたりとだいたい同価格帯のページ単価、と。

 ……ただし、一般的なマンガ家はライター、ペンシラー、インカー、レタラーの仕事をほぼ兼任する上、更にスクリーントーン貼りや仕上げ作業までをやって、ようやく1万円前後と、作業量的にはアメリカン・コミックスの作家の数倍の手間がかかってるのは、一応指摘しておくですね。

 ついでにいえば、アメリカン・コミックスのペンシラーが月産22ページ前後でやってけてるのに対して、日本のマンガ家の最前線であるところの週刊少年マンガ家の場合、週19ページ前後×4=月産76ページを最低限描かねばならない上に、人気作品の場合カラーページ(ページ単価は2、3倍くらい増えるけどシメキリは早い)や表紙(カラーページよりもいい金額もらえるけど、やはりシメキリは早い)をローテーションで描く「義務」が生じる感じで……働き者よね、日本人って(目をそらしながら)。

 しかも日本のマンガ家って、場合によっては背景やトーンワークを担当する人間を用意するわけだけど、その賃金は、出版社の「マンガ制作費」としては計上されず、作家個人が負担するという……

「単行本が出ればまとまったお金が手に入る」とかいうけど、要するに「単行本が出るほどに成功できなければまとまったお金が入らない」という……

 かてて加えて「単行本作業で連載をお休みする」とかいうことがあっても、単行本作業に関してギャランティでないし、連載をお休みするというリスクに対して出版社から保証金が支払われるでもなく……

 ……改めて書きだしてみると、ヒドい…スゴいな、日本のマンガ家。


※こーいう結論になっちゃうから、アメリカン・コミックスの作家と日本のマンガ家の比較はしたくなかったのよね(しれっと)。

※2014/0917追記:ていうか、日本のマンガ家とアメリカン・コミックスの作家とのギャランティにおける最大の違いって、「アメリカン・コミックスの作家は“アドバンス(前払い)”で原稿料がもらえる」「日本のマンガ家の原稿料は基本的に後払い」って点よね。
 アシスタント代に汲々してるマンガ家は、アドバンスで原稿料をもらえれば、かなり楽になるのよね。
 ちなみにアドバンスの場合、原稿が仕上がらなかったりすると、原稿料は返却するのね。当たり前だけど。


 とりあえず、日本のマンガ家は、何らかの形で待遇改善を求める組織を作ったり、ギャランティの交渉を行う代理人とかを立てたりするといいのでは……って、昔、竹熊健太郎が似たようなことをいってたな。


 ちなみにアメリカン・コミックスの歴史では、1960年代後半ぐらいにDCコミックス社で仕事をしてたベテランライター陣や一部の編集者が、「作家で組合的なものを作って給金上げさせよう!」という運動を起こしましたが、ライターよりも給料をもらっていたペンシラーやインカーが運動に興味を示さず(ヒデェ)、DCのベテラン編集者ジュリアス・シュワルツが運動の中心となっていたフリーランスのライターに仕事を振るのを止め(ヒデェ)、組合派の編集者がいつのまにかDCを退職してたので(……)、アッサりと潰れました。

 その後も組合的なものを作ろうという声は何度か上がってますが、形にはなってませんね。つか、現代のメインストリームのアメリカン・コミックスの場合、出版社に真っ向から楯突く位の気概のある作家は、「自分でインディーズ系出版社を立ち上げてコミックスを出版する」ってルートを採るしね。

 ……お、なんか冒頭のロバート・カークマンの話題につながった。


 そんな訳で、結論としては、日本のマンガ家も、ロバート・カークマンや、さいとう・たかを先生のように、インディーズ出版とか、自分で出版社を立ち上げるとかで、大手出版社に頼らないお金の稼ぎ方を模索するといいのではないでしょうか。

 ……って、その辺突き詰めると鈴木みそみたく、過去作品を個人で電子書籍化、みたいなハナシになるのか。

 じゃ、それで(ナゲヤリ)。

 オワル。
  
  
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コメント

*

俺も斜め読みしてたのでなかなか興味深いです。
やっぱ有名クリエイターだとあの記事に載ってる以外のインセンティブが発生すんのかなーとも思いました

*

ロブがこないだ「マーブルから何ドルか入金があった。超昔に描いた原稿が収録された本の再販があったみたい」とかツイートしてたり、マークウェイドが言うにはポールレーヴィッツが社長の頃は原作が使われた映像化作品の分もちょっとロイヤリティくれたみたいな話もあったり(MoS絡みなのでネタバレが怖くて調べられない)

*

>Captain Yさん
どうもです。そちらのTweetはコッソリ、シッカリ読ませていただいております。
>やっぱ有名クリエイターだとあの記事に載ってる以外のインセンティブが発生すんのかなーとも思いました
おう、いわれてみれば、あの記事に載ってなかった印税とかのハナシを追記するの忘れてました。
つっても、あんまり知識はなくて、「ライターとか、ペンシラーは印税もらえるらしいよ」程度の追記になるかと思いますが。
……ま、あとでコッソリ足しときます。

ライフェルド・ザ・レジェンドは、いまだに「X-フォース・オムニバス」なんぞが刊行されたりしてますから、けっこう折々で印税とかもらってるんでしょうな(新作で印税もらえるようガンバレよ、とは言うまい)。

>ポールレーヴィッツが社長の頃は原作が使われた映像化作品の分もちょっとロイヤリティくれた
レーヴィッツらしい、いい話ですなー。まあ、「レーヴィッツの頃は」ってことは、今はもらえてないのでしょうね。ワーナーだし(<偏見)。

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