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●DCユニバース講座:デッドショットさんの歴史・その1

2008.08.22 Fri

▼ゴールデン・エイジ デッドショットさんのハナシ:

 うぃす。

 っつーわけで、こないだ予告したように、「祝・『ダークナイト』公開」および「『シークレット・シックス』オンゴーイング・シリーズもうすぐ創刊」記念とか、適当に銘打ちまして、DCユニバースの微妙にマイナー、けど根強いファンの多いヴィラン、我らがデッドショットさんの歴史についてひとくさり語ってこう、という次第で。

 とりあえず第1回目(語り出したら長くなるのはウチのブログの常ですんで、数回に分けます)は、ゴールデン・エイジのデッドショットさんのお話から。

 えー、そもそも、デッドショットというキャラクターが登場したのは、これが実に半世紀以上も前、1950年の春頃に発行された『バットマン』第59号(カバーデート・1950/6-7)にさかのぼります。
 この号の巻頭に掲載された12ページの作品、「The Man Who Replaced Batman!」こそが、デッドショットの初登場話になります。

 こちらがギークの強い味方、GCDのホームページの該当号のデータへのリンク。

 巻頭に掲載されたってこたぁ、この号の表紙も飾ってるかと思いきや、リンク先を見れば解る通り、この号の表紙は巻末掲載の「Batman In the Future! 」を題材にしてまして、残念ながらデッドショットさんは表紙には登場しません。ウヌレ。

 で、この話のアラスジはこんな感じ。

 バットマン&ロビンが休暇でゴッサムを離れていた間に、デッドショットなるクライム・ファイターが登場。卓越した銃の腕前で悪人たちを倒し、ゴードン本部長の信頼も徐々に得ていく(ついには、「バット・シグナル」ならぬ、「ブルズアイ・シグナル」まで市警の屋上に設置される)。
 やがてゴッサムに戻ったバットマン&ロビンは、デッドショットの正体が億万長者のフロイド・ロートンであること、そして彼の目的が、クライム・ファイターとしてバットマンを追い落とした後、ゴッサムのギャングたちの頂点に君臨する、というものであることを突き止める。
 程なくしてバットマンは、デッドショットに挑むが、あらかじめデッドショットの銃の照準を狂わせていた(<卑怯ナリ)バットマンに軍配が上がるのだった……とかなんとか。

 ちなみに、この時点でのデッドショットさんは、「ドミノマスク+燕尾服」で「リボルバーの2丁拳銃」という、実にジェントルメンなスタイルをしておりました。
 その彼の勇姿は、

 こちらのページの

 この記事で参照できるので、見るがいいです。

 俺の書いたソレよりも詳細なアラスジも載ってるので、気になる方は読めばいいかと。

 ちなみに、この話の作者はおなじみボブ・ケーン。おなじみじゃない方に向けて付け加えれば、バットマンの創造者とされてる人ですね(※個人的にはバットマンはボブ・ケーンとビル・フィンガーの創造物だと断じたいですが、まぁ、ここで語るべきことじゃないので以下略)。

 バットマンの作者自らが創造者なんて、デッドショットさんも実は以外に格の高いキャラクターだったのですね。

 ……ま、この時期ボブ・ケーンは、脚本はゴースト任せ、絵にしてもバットマンとロビン以外は全部アシスタントに描かせてたことは、有名なおハナシでして。

 後年の調査により、この号に関わった作家はだいたい下記のような具合だったことが判明しています(まぁ、前述のGCDホームページのデータの転載ですが)。

 スクリプト:デーヴィッド・バーン・リード<David Vern Reed>
 アート:ボブ・ケーン<Bob Kane>(※バットマンとロビンのみ)
 ペンシル(※バットマンとロビン以外):ルー・シュワルツ<Lew Schwartz>
 インク(※バットマンとロビン以外):チャールズ・パリス<Charles Paris>
 レタラー:イラ・シュナップ<Ira Schnapp>
 カラリスト:不明

 てな感じで、現在、デッドショットを創造した作家は、ケーンとバーン・リード、シュワルツの3人とされています。

 
▼この時期のデッドショットさんを読むには:

 残念ながら、この『バットマン』第59号は、2008年8月現在、1度もリプリントされておりません。これが。

 ……ゴールデン・エイジ期の『バットマン』誌のコミックを年代順にリプリントしているハードカバー『バットマン:ダークナイト・アーカイヴス』の、最新第5巻の時点で、『バットマン』第20号までを収録してますから、このシリーズが15巻ぐらいまで出続ければ、多分、第59号の収録が果たされるんじゃないでしょうか。
 ……つってもこのアーカイヴスの刊行、2年前で止まってますけど。

 同様に、ゴールデン・エイジ期の「バットマン」のコミックを年代順に収録してくソフトカバー『バットマン・クロニクルズ』は、第5巻の時点で『バットマン』第9号までを収録してるので、こっちのシリーズが30巻ぐらいまで続けば……もういいですか、すいません。

 てなわけで、このデッドショットさんの初登場話を読むには、現状、「現物を買って読む」しか手段はありません。
 ま、買おうとしても、モノが半世紀前のコミックですんで、どこのコミックショップにも在庫はないですが。
 e-bayを丹念にチェックしたり、コミックショップに1000ドルほど投げつけたりすれば、多分、手に入るかと思いますが。
 時間も金もない人は、ゲイル・シモーネ先生の『シークレット・シックス』のオンゴーイング・シリーズが大ヒットして、登場キャラクターの過去の話を特集したリプリント誌なり単行本なりが出るのに期待しましょう。俺もしてます。


 さて、バットマンに取って代わろうというドテラい野望をもって初登場を飾りました我らがデッドショットさんですが、その後、しごくアッサリと忘れ去られます。
 ブッチャケ、ゴールデン・エイジのデッドショットさんの出番は、この初登場回だけで、以降、彼はコミック忘却界(※リンボとルビを振るとムアコックっぽいぞ)に送られます。南無。

 ……俺個人の勝手な推測になりますが、この時期、バットマンのヴィランはジョーカー、ペンギン、トゥーフェイスといった、アクの強いレギュラー・キャラクターがローテーションで登場してるような感じで、その中に分け入ってレギュラーの悪人の座を得るには、デッドショットさんは「微妙に地味」だったんじゃないですかね。燕尾服にドミノマスクって風貌にしろ、「銃がすごくうまい」って技能にしろ。

 で、デッドショットの「バットマンの向こうをはる実力者」というキャラクター像に「派手な外観」を与えてリメイクしたのが、翌1951年に登場したキラー・モスじゃねぇかと思うですが(こっちは「ブルズアイ・シグナル」ならぬ「モス・シグナル」で出動)。

 ま、コイツにしても、1951年に3度登場しただけで、その後15年間忘れ去られますけどね。
 ホントにバットマンのヴィランてば、層が厚くて新人は苦労するよなぁ。
 ……もはやデッドショットさんとは何も関係ないハナシになってますね、すみません。

 っつーわけで、いつものように無駄話で長くなりましたので、今回はこの辺で。
  
  

  
  

タグ:アメコミ講座

●いかにしてシーゲル&シャスターはDCコミックスと和解するに至ったか。

2007.12.28 Fri

▼唐突なるテキスト:

 ウチのブログ恒例、「書きかけで放り出してたテキストを突発的にリメイク&ペーストしてそのまま逃走」シリーズ。

 この間の「スーパーボーイの著作権」についての一連のエントリ用に書いてたんだけど、スーパーボーイのの著作権とは直接的に関係なかったんで、省略した「シーゲル&シャスターとDCコミックスとの和解」についてのテキストを、なんとなくリメイク。

 文章が、なんの脈絡もなく「なお」で始まるのは、元々スーパーボーイ講座のテキストのどっかに挿入するためだったので(面倒くさいので、いちいち前置きとか書き起こさねぇ。<なんたるダムンだ)。「なお」以前の事柄について知りたい人は、オリジナルの「●スーパーボーイは、ジェリー・シーゲルの著作物だった。」エントリを読むよろしね。

 っつーわけで。


▼アメコミ講座・余話:DCとシーゲル&シャスターが和解するまで:

 なお、1948年の裁判に敗訴したシーゲル&シャスターは、その後、もう1度DCコミックス社を相手に「スーパーマン」の著作権を取り戻すべく訴えを起こしてます、実は。

 彼らが訴えを起こしたのは、1969年。
 なぜこの時期に訴えたかというと、彼らが1938年に移転させた「スーパーマン」の著作権の最初の保持期限が来てたからですね(1938年+28年=1966年までが最初の保持期限)。

※「著作権の保持期限」に関しても、オリジナルのエントリのどこか(<どこだよ)を読み返してください。

 無論、DCコミックス社側は、著作権保持の再更新を申請して、更に28年間「スーパーマン」の著作権を保持しようとしてたのですが、シーゲル&シャスターは「再更新など認めん」とばかりに訴えを起こしたのでありますな。

 さて前回の裁判では、書類と有能な弁護士を揃えていたDCコミックス社に対し、大した用意もせずに望み、結果、ナススベなく敗北を喫したシーゲル&シャスターでしたが。
 この2度目の裁判では、それなりに資料を用意しつつ粘り強く争ったようで、裁判は実に6年にも渡り続きました。

 チナミニ、シーゲルらが訴えを起こす2、3年前、1967年度にDCコミックスは、巨大メディアコングロマリットのキニー・ナショナル・サービス<Kinney National Services>傘下に入りまして。
 で、このキニーは翌1968年に、かのワーナースタジオも買収しまして、更に合併を期に、社名を「ワーナー・コミュニケーションズ<Warner Communications>」に改称してます。早い話が、現在のタイム・ワーナーの前身ですな。

 でで、そんな大企業サマに、シーゲル&シャスターは噛みついちゃった訳ですよ。

 ……どんな結果になったかは、その、お察しください。

 まあ具体的にいいますと、1975年4月、「スーパーマンは、シーゲルとシャスターが、DCコミックス社の雇用人としての立場で生み出したものであり、彼ら2人には著作権は属していない」との判決が下されまして、シーゲル&シャスターの訴えは退けられました。

 一説では、この裁判にはシーゲル&シャスターが「スーパーマン」を(DCの雇用人としての立場でなく)個人で生み出したことを示す証拠が無数に提示されたそうですが、にも関わらず上記のような判決が下されたそうで。
 さすがはワーナーの弁護士軍団ですな。

 めでたし、めでたし(ワーナー帝国が)。


 ちなみに、この判決の出た1975年に、ワーナー大帝国は、劇場用大作映画『スーパーマン』の制作をアナウンスします(まぁ、判決が出たから、ってワケじゃないでしょうが)。
 で、この知らせを聞いたシーゲルは、「奴ら、俺の作品でまだ大儲けしやがる気だ!(血涙)」的に激昂しまして(言うまでもなく、この劇場版の収益はシーゲルらには一切還元されません)、「スーパーマン」の権利を巡るDCとの戦いを継続しようとの意思を新たにします。
 が、彼らの弁護士は、この時はなぜか積極的に動こうとはしませんで(……控訴しても負けるのが目に見えてたからでしょうかね)。

 しかし憤懣やるかたないシーゲルは、DCコミックスのジャック・リーボウィッツが、いかにして彼らからスーパーマンの権利を巻き上げたかを、切々と――実に10ページにも渡り――綴った文章を書き上げると、コミック業界内の各方面に送り、彼らを援助してくれるよう求めます。
 そして当時、「コミックブック芸術アカデミー<Academy of Comic Book Arts>」(※)の委員長を努めていたニール・アダムスも、この手紙を受け取った1人でした。

(※)コミックブック芸術アカデミー:アカデミー賞を送り出してる「映像芸術科学アカデミー<Academy of Motion Picture Arts and Sciences>」に倣って1970年頃に創設された組織。コミック界のアカデミー賞とでもいうべき「シャザム賞<Shazam Awards>」を創設したが、1970年代後半に活動を停止。別に業界内に強い権力を持ってたりはしないので、普通はこんな所に「困ってます」な手紙は出さない。

「その手紙を見た俺は、誰かが何かしなきゃならないと感じた。その誰かってのは、おそらくは弁護士ではあり得ない。何故なら、これまで彼らがしてきたことはいずれも失敗に終わっていたからだ。だから、問題は誰がそれをやろうか? ってことと、いかにしてやるか? ってことだ」(アダムス談)
引用元:こちらの記事

 が、アダムスは、その役目に相応しい人間を思いつけませんで。結局の所アダムスは「誰もいなきゃ、俺がやるしかないじゃん」的に、自身が立ち上がります。

「俺はこの業界の誰にも恩義を感じちゃいない、だから、俺の振り上げた拳は誰にも止められやしない」
「もしもDCコミックスが俺に今後1ページたりとも仕事を回してくれなくとも、そんなことは関係ない。俺には他に仕事の口はある」

引用元:同上

 こうしてアダムスは、シーゲルらと接触し彼らの後援を申し出まして。
 電話にてシーゲル&シャスターの現状を聞いたアダムスは、この闘争をやり抜く決意を固めます。
 ――なにせ、当時のシーゲルは、20年以上もコミック業界から干され、単なる事務員として7500ドルの年収で妻と娘を養っていたし、一方のシーゲルは独身の上、半ば盲目になっており、兄弟のアパートに居候しメッセンジャーとして辛うじて糊口をしのいでいたものの、冬の寒さに耐えるための外套すら買えないという窮状でしたので。

 こうしてアダムスは、以降4ヶ月に渡りシーゲル&シャスターの窮状を訴え、彼らに正統な権利を与えるための運動を展開してきます。
 アダムスは、シーゲルとシャスターを(時には自分自身も)TVのトークショーやニュース番組に出演させ、彼らの現状を大衆に伝えさせ、また定期的に記者会見を開き、諸々の原稿をマスコミ各位に発信していきました。
 やがて、全米最大規模のコミック作家組織「ナショナル・カートゥニスツ・ソサエティ<the National Cartoonists Society>」(※)や、個人のコミック作家らもアダムスの運動に協力を申し出ます。

(※)ナショナル・カートゥニスツ・ソサエティ:1946年創設の、由緒正しきプロ作家の組織。こちらは「ルーベン賞<Reuben Awards>」を設立している。「よりよいカートゥーンの明日のために」的な理念で作られた組織であり、「作家組合」的な権力は持たない。ただし、コミックブック業界のみならず、新聞マンガや広告業界などの作家も所属してるので、本気になって何らかのアクションを起こすと、けっこうな影響力となる。

 さて、こうした事態を重く見たDCとワーナーは、程なくしてアダムスに接触。連日のようにアダムスと会合を持ち、シーゲルとシャスターの処遇についての摺り合わせを行っていきます。
 で、1976年2月、DCコミックス社はシーゲルとシャスターに対し、年間各3万5千ドルの生涯年金医療補助を与えることを確約します。
 また、1948年の裁判以来、抹消されていた「スーパーマンのクリエイターは、ジェリー・シーゲル&ジョー・シャスターである」というクレジットも『スーパーマン』のコミックに復活することとなりました(『スーパーマン』が、TVドラマや、映画、アニメーションなど、他の媒体に進出した際にも、きちんとシーゲル&シャスターのクレジットは記載されています)。

 こうして、シャスター&シーゲルは、その晩節を安楽に過ごし(失った時間は取り戻せませんでしたが)、DCとワーナーも、「クリエイターたちに温情を与えた」として、評判を取ることとなりました。

 めでたし、めでたし(まぁ、それなりにみんなが)。


 以上、リメイク終了。
  
  

タグ:アメコミ講座

●DCユニバース講座:スピードフォースについて

2007.10.18 Thu

 シリーズ「テキストリライト(略)」、今回は、旧ホームページに掲載していた「フラッシュ講座」のリライト版テキスト。

 こう、Wikipedia日本語版「ザ・フラッシュ」の項目が、明白にオイラの「フラッシュ講座」のイタダキな上に、明白に間違ってる箇所がある(「フラッシュとグリーンランタンとの因縁」って項目書いた奴は誰だ)ことにフンガイして、2007年度版として丸きしリライトし……ようとして、途中で放り投げていた奴。

 本当はこの原稿も未完成やねん。諸設定の出典をロクに記してないんで。
 ま、気が向いたら追記する。<また口だけか。


●DCユニバース講座:スピードフォースについて

 さて今回は、歴代フラッシュやキッドフラッシュのように、こう、DCのチームものにゃあ、1チームに1人は居たりする、この、割合メジャーな存在である所の“高速移動能力者(スピードスター)”の人についての講座なワケですが。
 その、割と皆さん彼らについては「速く走る人」っていう単純明快なコンセプトだけで、こう、満足しちゃってて、彼らが「何故に」高速移動が出来るのか、っつーところまでは踏み込もうとはして無いんじゃないか、と思いましたんで、こう、今回、その辺を解説しようというワケですが。


▼スピードフォースの基礎知識:

 ま、ブッチャけた話、歴代フラッシュ、インパルス、ジョニー・クイックらの、乱暴に括っちゃえば、“フラッシュと仲間たち”なスピードスター系の方々ってのは、ですね。“自力で”高速移動(※1)をしているのではないのですよ、実は。

 その、我々の住んでるこの世界に隣接している次元界に、ですね。「スピードフォース」っていう、意志を持つといわれる(※2)、未知の運動エネルギーで満ちた世界がありまして。フラッシュたちはこの次元界にアクセスすることで、無尽蔵な運動エネルギーを引き出し、高速移動を行っているわけなのですわ。これが。

 つまり、正確には彼らの超能力というのは、“高速で走ること”では無く、“スピードフォースにアクセスして、運動エネルギーを引き出すこと”なのですね。高速移動というのは、運動エネルギーの最も解りやすい使い方に過ぎません。

(※1)例えば、マーヴルのクイックシルバーさんが、自力(ミュータント・パワー)で、高速移動してる人の例。てか、スーパーマンやマーシャン・マンハンター、ワンダーウーマンあたりも、「自力(超人クラスの筋力)で高速移動してる」人ですが。

(※2)スピードフォースが意志を持ってるか、ってのは、実際のところは不明。スピードフォースの発見者兼、命名者であるマックス・マーキュリーは、常々「ある」といってるけど、歴代フラッシュで最もスピードフォースと関わりの深いフラッシュ(3)は、「ない」と断言している(こないだの『オール・フラッシュ』第1号冒頭の独白など)。

 さて、具体的には、スピードフォースから運動エネルギーを引き出すことで、以下の様な能力を行使できます。

・超高速での移動(~光速):走るですよ。速く。ちなみにスピードフォースと接触している間は、フラッシュ自身の五感も高速状態に対応した状態となり、高速移動中でも、視界などは、通常とそんなに変わらぬ様です。なぜか音速を超えて走るスピードスター同士が、普通に会話もできたりします(<これは、後述する“フィールド”を接触させているせいかもしれませんが)。

・悪路の踏破:こう、右足を壁面につけて、その右足が下にすべり落ちる前に、左足を前に出し、その左足が落ちる前に、右足を前に出し……を高速で繰り返すことで、垂直なビルの壁面も、駆けのぼることができます(そんな勢いで壁面を蹴ったら、反作用ですぐに壁面から離れちまう、とかいう野暮は、いわないでいただけると幸いです<あるいは、その反作用すらもスピードフォースから指向性のある運動エネルギーを引き出して相殺してる、とか)。
 同様に、右足で海面を踏んで、その右足が沈む前に(水の表面張力が耐えきれなくなる前に)、左足で海面を踏んで、その左足が沈む前に右足で海面を踏んで……を繰り返すことで、海の上も走れます。

・物質通過:その、『キテレツ大百科』の「潜地球」の回でも説明されていましたけど(<ニッチだ、その説明は)、物体の原子と原子の間ってのは、結構「スキマ」があるわけですよ。で、スピードスターは、自身の身体の原子を高速振動させることで、他の物体の原子間のスキマに、自分の原子をスベり込ませて、結果的に物体を“すり抜ける”ことができます。できるんです。できてるんだからしょうがないじゃないですか(逆ギレ)。
 ただし、この能力は、全身の原子のコントロールを行う必要があるとかで、多少の訓練が必要だそうです。
 3代目フラッシュ、ウォーリー・ウェストは、一応、この能力が使えたのですが、通過した物体の原子の状態を不安定にしてしまい、通過直後に対象の物体が破壊されたり、いきなり爆発する、といった、オマケが付きました。

・透明化:文字通り、目にも留まらぬ速さで移動、あるいは目にも留まらぬ早さで肉体を高速振動させることで、第3者から見て透明になる技です。

・分身の術:透明化の応用。忍者マンガでおなじみ、素早く動くことで、何人もいるように見せる技。目にも留まらぬ速さと、観察者の視覚が捉えられる程度の速さの、2種の緩急をつけた高速移動を行うことにより、残像を生み出すとか何とか。多分。
 2代目フラッシュはこの技を応用して、隠し芸「1人ピンポン」を完成させました。

・地震:素早く地面を踏みつけ踏みつけ、更に踏みつけることで、振動を盛大に増幅させ、地面を揺らす技。……足が折れそうな気もしますが(無粋)。

・風を起こす:運動エネルギーを消費することで(要するに走ったりして)、空気に対流を起こし、大気の流れを生み出す……まぁ、要するに「風」を起こすわけですね。
 大概は、その場でクルクル回ったり、腕をグルグル回して、竜巻を生み出す、といった使用法が多いですな。竜巻は、武器として使用する他、高い所から落ちている仲間の下に発生させて、落下速度を和らげるなどの活用法もあります。

・浮遊:風を起こす能力の応用で、四肢を高速回転させて小さな竜巻を起こし、暫定的に浮遊することができます。ただし飛行自体はできず(※例外アリ。後述)、高所から落ちた時などに落下速度を和らげるのに用います。

・ソニックブームの投射:「ソニックブーム」っつーのは、音速以上で移動する物体が発する衝撃波のエネルギーが伝播し、不連続な音波として観測される現象です。まぁ、マンガとかゲームの必殺技でおなじみですね。「風を起こす」能力の更に上位の能力になります。

・高熱の発生:えーと、物質ってのは、その分子なり原子なりの持つ「運動エネルギー」っつーもんが、「熱エネルギー」に対応してるわけですわ。その、「E=(3/2)RT」でしたっけ、分子の運動エネルギーは温度に比例する、ってアレ。
「温度が高い状態=分子が運動エネルギーをたくさん持ってる状態」、逆に「原子が運動してない(運動エネルギーが少ない)状態=温度が低い」。で、分子が限界までエネルギーが無い状態が、「絶対零度」って、アレ。その辺良い大人なら解りますね?(解ってください)
 で、まあ、フラッシュは接触している物質の分子に運動エネルギーを与えることで、物質の温度を上昇させることができます。砕いていうと、フラッシュさんはヤカンの底を思いっきりコスって、摩擦熱で湯を沸かせます。

・飛行:その、フラッシュさん他のスピードスターたちってのは、基本的には“飛行”はできないことになってるんですわ(つか、運動エネルギーを自在に引き出すことができるんなら、いくらでも空を飛べる様な気が……<無粋)。
 ですが、何故かジョニー・クイックとその娘ジェシー・クイックだけは、ですな、スピードスターの中でも飛行能力を持ってるのですわ。これが。なぜか。
 DCのキャラクター辞典『Who's Who』のジョニー・クイックの項目を参照しますと、彼らの飛行原理は「スーパースピードパワーを利用した反重力パワー」だそうです。なるほど。納得ですね(納得したまえ)。反重力の癖にその場に浮けない、その癖、「かなりのエネルギーを反重力に費やすために、飛行速度は高速移動時よりも遅い」そうで(それって能力の使い方間違ってるような……<無粋)。
 でもこう、同じスピードフォースから力を得ているスピードスターの中で、何故彼らだけが反重力パワーを持っていて、フラッシュさんたちは持ってないのか、ってことは、多分、今まで一度も明文化されてないです。
 少なくともスピードフォース理論の提唱者であり、「ジョニー・クイックらの能力も、スピードフォースを起源としている」との、統一理論を打ち出しちゃった元締マーク・ウェイド先生は説明してないですわ。
 まぁ、その、ジョニー・クイックが飛べるのは、そもそもゴールデンエイジにジョニーさんが初登場した際、先達のフラッシュとの差別化のために、能力を付け加えた結果で、一方のフラッシュが飛べないのは、「飛べちゃうと、万能過ぎて詰まらない」っつー、演出上のソレなんでしょうが(<無粋、無粋)。


 で、この他に、熟練した能力者になりますと下記の能力なんかも使えるようになります。

・運動エネルギーの付与:スピードフォースから引き出したエネルギーを、自分で使わず、他の物体に与える能力です。基本的には接触している物体にのみ、エネルギーの転移は可能。こう、手に持ったボールをノーモーション&剛速球で投げ返したり、吹けの悪い車にちょいと触れて猛加速させたり、あるいは何らかの事情でスピードフォースに接触できなくなった能力者Aに対し、接触できている能力者Bが、自身のパワーをAに与える、とかいうことも可能です。

・時間移動:まぁ、本気を出せば、光速近くまで走れるフラッシュさんは、ちと懸命に走り続けてれば、ウラシマ効果で未来にいけたりしますが<やや無粋。
 実際にはコズミック・トレッドミルという専用の機械(「東京フレンドパーク」の一生懸命走ると電力が起きてクイズの解答ボタンが押せるアトラクションに出てくるローラー付き機械、の親戚みたいなの、って分かり難いな、おい)を用いて、運動エネルギーを時空エネルギーに変換することで、(トレッドミルごと)過去と未来に移動することができます。

・次元間移動:えー、こうDCユニバースってのは、平行世界(マルチバース)ってのが異なった周波数の障壁で遮られてまして。
 で、フラッシュさんは自身の身体の振動率を、その次元障壁と同じ周波にすることで、障壁を突破し、お隣の次元(アース2だのアース3だの)に移動できるのです。この、周波数を同調させる技術は、一朝一夕では身に付きませんで、スピードスター各人の長年の勘と経験が、これを可能にします。
 ま、1986年の『クライシス・オン・インフィナイト・アーシズ』で、アース2だの3だのといった平行世界は消滅しちまいましたんで、以降はこの能力は滅多に使われませんでしたが。
 が、2006年の『インフィナイト・クライシス』以降のDCユニバースは、マルチバースの世界観が復活しまして、今後、この能力が復活するやもしれません。
 現行の『カウントダウン』誌の巻末に連載されている「マルチバースの歴史」中のセリフで、「スピードフォースによる次元間移動は可能」と明言されてますし。


 で、更に更に熟達すると、下記のような能力も可能になります

・運動エネルギーの吸収:今までとは逆に、任意の物体の運動エネルギーを吸収する能力です。飛んでくるピストルの弾を静止させたり(もちろん重力ってものがあるんで、普通は下に落っこちますが、超熟練者ならば、弾丸を空中に静止させることすら可能)、原子の運動エネルギーを奪うことで物質の熱を奪うことが可能になります。
 3代目フラッシュなんかは、敵の強力なコンピューターの回路に物質通過の能力で手を突っ込みつつ、回路を絶対零度まで冷やして「超伝導」を引き起こし、ショートさせたこともありますが(普通に壊した方が効率が良いような……)。
 多分、自分の身体の運動エネルギーとかも奪えるんじゃないかと思います。冷房いらずですね。
 で、更にこの吸収したエネルギーを、ですな、自分の運動エネルギーに上乗せすることも可能です。かつて初代フラッシュさんは、亜光速で走りながら、併走してる仲間(こっちも亜光速)の運動エネルギーを吸収し、「亜光速+亜光速=超光速」な具合に加速しまして、コズミック・トレッドミルなしに、自力で時空間を超えたりしました(そこの方、俺が語ってるのはフィクションの話ですんで、相対性理論うんぬんを持ち出してツッコむのは辞めてください)。

・停滞フィールド:これは上の「運動エネルギーの吸収」の、更に発展型でして、自分の周囲に運動エネルギーを吸収する一種のフォースフィールドを展開させ、自身に向けて発射された弾丸や飛び道具などを無力化するという、一種のバリヤーです。多分、いっぺんに吸収できる運動エネルギーやその範囲は、能力者の熟達具合に比例すると思われます(ま、この辺、劇中で描写されたことはないけど)。

・超回復:自身の細胞の代謝速度を加速させることで、身体に負った傷を瞬時に癒す能力です。そこ、「いや、運動エネルギーで代謝速度は……」とか、無粋な突っ込みしない。

・スピードフォースの固体化?:一時期、3代目フラッシュは、「スピードフォースでできたコスチューム」を、身につけていたことがあったんですよ。
 運動エネルギーをどうやったら固体にできるのかは、作中でロクに説明されたことはないので、聞かないでください(※)
 とりあえず、3代目フラッシュが念じると、全身をスピードフォースのオーラが覆って、それが赤・黄色の例のコスチュームになるんですよ。
 で、フラッシュは、このコスチュームを任意に変形させることもできまして、腰のあたりにポケットを作ったり、普段は露出している口の回りを覆ってガスを吸わないようにしたり、といったこともしています。

(※)もしかしたら、「スピードフォースでできたコスチューム」ってのは、単なる比喩表現かもしれませんし(<オイ)。こう、スピードフォースが空気中の任意の元素のみに指向性を与えて(マクスウェルの悪魔か)、その場でポリマーを化学合成している……とかいうのはどうか(<本気にしないように)。

・ハイパータイムの突破:えー、『クライシス・オン・インフィナイト・アーシズ』~『インフィナイト・クライシス』の間の時期のDCユニバースってのはですな。こう、単一のユニバースになったと思いきや、実は依然、多元宇宙的な世界観だったのですよ。その、「ハイパータイム」って言葉に代表される、後付け設定なんですが。
 まあ、『インフィナイト・クライシス』によって、多元宇宙の世界観が復活した現行のDCユニバースじゃ、「ハイパータイム」の設定はイマサラ知っても意味がないんで、詳細は語りませんが。
 とにかく、その当時のDCユニバースでは、他のユニバースへ次元間移動をするのは異様に困難で、大量のエネルギーを必要としてました。熟練したスピードスターが集中してスピードフォースを全開にすることで、ようやく可能になるくらいに。
 ただし、そうまでして次元の壁を突破しても、たどり着く次元ってのは、それ専用の機械とかを装備してない限り、ごっつランダムでして、大概は「見知らぬ世界」に顕現することになります。

・超停滞状態:最近のコミックで、怒り心頭に達した結果、フラッシュ(3)が、とある人間に対して使用した技です。文章で説明すると面倒なんですが
1)特定の対象(仮に「Iさん」としておきます)のエネルギーの流れを制御して、100年をかけてマバタキを1回するような、超々々々々スローモーな状態にする。
2)しかも、Iさんは、通常の時間流の流れから切り離されており、100年経とうがマバタキ1回分しか年齢を重ねない。
3)ただし、Iさんは、肉体が100年かけてマバタキ1回しかできないにも関わらず、この状態でも普通の速度で思考できる(これは、Iさんがスピードスターなせいもあるかと思われます)。
 要するに、彼の体感時間で永遠に近い年月、外界と隔離された状態で(視覚は残ってる模様。当然、視線は動かせないけど)、意識だけ保ち続けているという、肉体の檻に囚われてるわけですな、Iさんは。イヤだなぁ。
 っつーかこれは、運動エネルギー云々で解決するモンじゃなく、時空間の方を歪めてるだろ、おい、な感じですが。
 とりあえず、この能力は、フラッシュ(3)が必要以上にスピードフォースと接触していたことで発動できた「超裏奥義」な模様。


▼スピードフォースの凄ぇ力:

 あさて、通常、物体が高速で移動するってぇと、こう反作用だぁの、空気抵抗だの摩擦熱だの衝撃波だのがアレしまして、はたまた光速の近所まで行きますと、赤方偏移とか、質量の増加とか、まぁ、その手の障害が生じてくる、ってのはみなさんご存じですね(知らなくてもこの際、頷いといてください)。

 で、まぁフラッシュたちも、一応、通常の物理法則の影響は、受けるわけですよ。一応は。
 ですが、スピードフォースってのは、恐ろしいことに、そうした高速移動時に生じる一切の影響をですね、打ち消してしまうことが出来るんです。

 えーと、皆さんお手持ちの、フラッシュが登場するコミックをですね、ちょいと見て下さい。その、フラッシュが能力を行使している時にはですね。その身体が稲妻状の(スピードフォースの)オーラで覆われて、ますね? このオーラがですね、空気抵抗、衝撃波、赤方変移、その他一切をキャンセルしてるんです。
 運動エネルギーの付与だの吸収だのもできるってことは、熱力学の法則すらも、無視できるようですな。

 凄いですね、実に。

 まぁ、マンガですから。<大無粋。

 つまり、このオーラに覆われてる限り、フラッシュのコスチュームは摩擦熱で燃えたりしませんし、フラッシュが市街地を音速で走っても、衝撃波で窓ガラスが割れたりしません。フラッシュが超音速で本を読んでも、めくったページが空気にぶち当たって爆散したりもしませんし、超超高速で飯を食って、噛んだパンが音速を突破して顎をぶち抜いたり、飲み込んだ後で味を認識する、とかいうこともないし、超光速で走ってる時に視界が赤方変移を起こしたりもしません。

 あと、このオーラは、使用者の周囲の任意の対象にも、同様の効果を与えてくれます(ただし、オーラを対象に接触させる必要アリ)。だから、恋人を胸に抱いたフラッシがマッハで走っても、恋人の首がもげたりしません。
 その他、柳田理科雄あたりがツッコミをいれてきそうな、面倒くさいもろもろの物理現象も、オーラ様のおかげで無効です。
 ありがたいですね(主にコミックの作者が)。

 ちなみにこのオーラってのは、通常は自分の身体の周囲にしか発生しないんですが、熟練者になりますと、このオーラの影響範囲を拡大(身体から2、3メートルぐらいまで延長可能)させることが可能となります。
 で、その辺の物体をこのオーラで包み込むことで、肉体的に接触することなく物体を移動させる、一種のテレキネシスとしても使用できます。

 で、このオーラってのは、ですな。劇中や各種資料にて明文化されたことはないのですが(……多分。下手したらお便りコーナーとかネット上の掲示板とかで明文化されてる場合も有るんで、断言はしませんが)、その効力の発揮する対象を「能力者の任意で」指定できる模様です。

 例えばこう、上記のように市街地に突風を巻き起こすことなく走るフラッシュは、一方でその場で高速回転することにより竜巻を起こして、悪人を巻き上げるということもしています。ですがこの「高速回転して竜巻を起こす」ってのは、オーラの「高速移動時に生じる一切の作用を打ち消す」ってのに明らかに矛盾していますね?

 これは竜巻を作ろうとしたときに限ったことではなく、「衝撃波を敵にぶつけて倒す」、「摩擦熱を利用して火を付けようとする」等々、能力者が高速移動時に生ずる物理現象を意図的に利用しようとする際、それらの現象に対してオーラの効果はキャンセルされます。

 以上のことから自分的には、こう、オーラってのは、使用者が任意の対象にその効力を及ばさないようにすることも可能だと、推測するのですが、どうすか。

 あと、フラッシュが音波なり衝撃波なりを敵に投射しようとする場合、普通だったらその波は、フラッシュを中心に放射状に拡散するはずなのに、大概は敵の方に、まっすぐ突き進んでます。
 っつーことは、オーラには能力者の任意で「高速移動で生ずる各物理現象に指向性を与える」能力も有るんじゃ、とか思ったりもしますが、いかがでしょうか。


 ま、かように能力者の意志の力で、物理現象を自在に制御する、っつーのがフラッシュさんたちの能力の本質でありますわ。

 つまり、その能力を効果的に用いるためには、能力者が“運動エネルギーを自在に操る”という力で、何がなし得るのか、ってのを知識として解っている必要があります。
 歴代のフラッシュが科学・物理分野に広範な知識を持つ人物だった(初代:研究所所員、2代目:科学捜査官、3代目:大学にて物理専攻)ことは、まさに天佑、と申せましょう(※)

(※)4代目フラッシュも「超高速で図書館の本を全部読んだ」ことで、一応、知性が底上げされてたのですが……(発揮する前に……)。

 かつて、他の誰よりもスピードフォースに通じた悪のスピードスター、セヴィターは、「速度が力ではない、知識こそが力なのだ」っつーケダシ名言を残しています。

余談:その昔ソビエトの科学者が、スピードフォースへの接触を可能にする薬品を作りまして、その人体実験を自分自身で行った所、摩擦熱で焼け死んだ、ってエピソードがありまして。
 これは恐らく薬品が不完全だった訳じゃなく、その科学者の中に「高速移動すれば摩擦熱が発生する」って知識を持ったまま実験しちゃったために、その無意識の「こうあるべきだ」って理屈をオーラが感知して、その摩擦熱の効果を打ち消しちゃったんじゃないかな、と、個人的に解釈してますが。
 一方で、フラッシュ3人の場合は、突然のアクシデントで能力を発現させために、こう、「高速移動すると色々起きる」とか無意識にでも考える前に、「何の問題もなく高速移動が可能」って現実を先に提示されたのが功を奏したんじゃないか、とか。まぁ、全部妄想ですが。

余談その2:『フラッシュ』(vol.2)の初期、まだスピードフォースの設定が登場してなかった頃は、フラッシュの身体のオーラは周囲の運動エネルギーを吸収して、フラッシュの推進力に変える能力を持ってる、とされてました。
 またこの当時、フラッシュさんは運動時に自身の体内のエネルギーも消費していたようで、能力を全開で使った後では、メシを多量に食ってエネルギーを補給する必要がありました。


▼スピードフォースの弱点

 さて、この能力とて万能ではございませんで、いくつかの弱点があります。

 最も致命的なのは、スピードフォースは能力者の身体能力に対して何らの影響も及ぼさない、という点です。たとえスピードフォースと接触している状態であろうと、彼らの肉体ってのは常人のそれと同じですんで、加えられた危害に対して容易に傷ついてしまうのですわ。これが(フラッシュの能力には周囲に停滞フィールドを投射する、一種のバリヤーもありますが、この能力は、無意識に発動出来る性質のものではないですし)。

 第2に、この能力の上限は、能力者の肉体及び精神状態に大きく左右されてしまいます。
 例えば、老人となり、相応に肉体・精神が衰えたフラッシュ(1)は、最盛期に比べてその能力は大きく落ちています。
 また、フラッシュ(3)は、『クライシス・オン・インフィナイト・アーシズ』事件にて、先代フラッシュが死亡した後、彼の跡を継いでフラッシュを襲名したのですが、その際、先代の跡を継ぐ、ということに対する潜在意識下のプレッシャーによって、最高速がマッハ3前後にまで落ち込み、時に能力が全く使えなくなることすらありました。

 そして第3の弱点。それは、“もの凄ぇ便利過ぎ”ってことですか。
 いやもぉ、普段は「スピードフォース」&「オーラで無効化」でナシにして、都合が悪い時ゃ無効化を無効化、っつーのは、ね。ライター的に楽だよな、と。
 こう、“たか鬼”とかで小石を踏んづけて“地面より高いからセーフだよ”とかいったり、ジャンプして「空中だからセーフ」とかくだらねぇ理屈こねる小学生と同レベルっつーか。
 ま、そういう制限との戦いなんてのは、フラッシュという物語の本筋じゃないし、そういう些末なディティールを楽しむ、何てのは年長のマニヤくらいなんで、そう突っ込んでどうこういうものでもないですが(<じゃ、いうなよ)。

 で、最後に第4の、最も重要な弱点ですが、スピードスターたちはスピードフォースからあまり大量にエネルギーを引き出しすぎると、逆にスピードフォースに取り込まれてしまい、この次元から肉体が消失して、フォースと一体化してしまうんですわ。

 えー、長くなるんで、項を改めますが。


▼スピードフォースとの一体化

 でー、この「スピードフォースとの一体化」ですが、これまで幾度か、確認されてまして。
 例えば、
・フラッシュ(3):恋人をレーザー光線(当然ながら光速)から庇うために超光速を出して飲み込まれた
・ジョニー・クイック:娘のジェシー・クイックを救うために、限界以上の能力を引き出して飲み込まれた
 なんてぇ事例があります。

 また、能力者が熟練して、より強くスピードフォースにアクセスできるようになると、やっかいなことにスピードフォースに能力者が“呼ばれる”(※)ようにもなるようです。
 で、この呼び声にウッカリ答えて、走り出しちまうと、これまたスピードフォースに突入しちゃうのですな。

(※)この「呼ばれる」ってのは、「スピードの禅僧」の渾名で呼ばれる、マックス・マーキュリーがそう表現しているだけなんで、スピードフォースに意志があって、実際に「呼ぶ」のかどうかは、俺は知りませんが。<逃げた。

 ただし、スピードフォースに飲み込まれても、この世界に帰還できないことはないです。

 例えば、先の事例で、恋人を守って、スピードフォースに突入したフラッシュ(3)は、その「恋人への愛」がアンカーになって(クサいね、どうも)、スピードフォースに飲み込まれることなく、元の世界に帰還することに成功してます。
 ウォーリーさんがいうには、スピードフォースは能力者がこの次元に未練がある場合はそうそう「向こう側」へ引っ張らないそうです。

 また、「呼ばれて」も、スピードフォースへの突入に失敗することもあります。
 マックス・マーキュリーの場合、かつてスピードフォースに呼ばれて、次元の向こう側に突入しながら、最期の一瞬、集中を乱したために、スピードフォースに「弾かれ」、元の世界に帰還しています。ただし、「弾かれた」ショックで、時間を飛び超え、数十年後の未来に顕現しましたが。
 悪のスピードスター、セヴィターも、かつてマックス・マーキュリーらとの戦いで、スピードフォースに飲み込まれかけましたが、やはり弾かれ、数十年後に帰還を果たします。

 また、強力な魔力などを用いることで、スピードフォースに飲み込まれたものを「引きずり出す」ことも可能です。初代フラッシュの仇敵であったスピードスターのザ・ライバルは、一時スピードフォースに飲み込まれていたのですが、異次元の魔術に精通した悪人ジョニー・ソローの援助によって、この世界に帰還しています。

 ちなみに、飲み込まれる、あるいは弾かれるなりして、スピードフォースの“ヘリをかすめて”生還したスピードスターたちは、以前よりもその能力を格段にアップさせる、っつー副作用があります。“死に損なう程強くなる”サイヤ人方式ですな。


▼『インフィナイト・クライシス』以降のDCユニバースにおけるスピードフォース

 さて、長々と説明してきましたが。

 その、2006年に行われたクロスオーバー『インフィナイト・クライシス』。DCユニバースの世界観を大きく変えることとなったこのイベントにおきまして、ここまで長々と説明してきた「スピードフォース」の本質もまた、大きく変わっちまってます。


※こっから先は、『インフィナイト・クライシス』のネタバレを含みますので、注意してくださいな。

 さて、この『インフィナイト・クライシス』第5号で、この事件の黒幕の1人、スーパーボーイ・プライムが狂奔し、ティーン・タイタンズ歴代メンバーを含む、数十名のヒーローを相手に、大立ち回りを繰り広げたのですが。
 この際、3代目フラッシュと、初代フラッシュ、2代目キッド・フラッシュの3人は、スーパーボーイ・プライムを掴まえたまま超光速まで加速することで、スーパーボーイ・プライムもろともスピードフォースに突入しようと試みます。

 が、敵もさるもの、ヒッカくもの(<何十年前のセンスだ)。スーパーボーイ・プライムも抵抗しまして、なかなか超光速に達することができませんで。まず、初代フラッシュが、スタミナ切れで脱落。次いで3代目フラッシュが、エネルギー体となって時空の彼方に消え去ってしまいます。
 残されたキッド・フラッシュだけでは、スーパーボーイを封印できないかに思われたのですが、次の瞬間、彼らの前方に渦巻く時空の裂け目から、2代目フラッシュ、マックス・マーキュリー、ジョニー・クイックら、かつてスピードフォースの彼方に消失したスピードスターが現れ、キッド・フラッシュを援助、スーパーボーイをスピードフォース内に封印します。

 このできごとの後、ただ1人、この世界に残ったスピードスターである初代フラッシュは、「スピードフォースは失われた」といい捨てます。

 まあ、この後、スーパーボーイ・プライムは、封印された次元から脱出し、一方で、キッド・フラッシュも、彼の体感時間で4年の間、時空をさまよったあげくに、元のDCユニバースに帰還するのですが。

 でー、この『インフィナイト・クライシス』での描写で、1つ重要なのが、スーパーボーイ・プライムの封印を試みた時に、ジョニー・クイック、マックス・マーキュリー、2代目フラッシュの3人が、スピードフォース内から顕現した、ってトコですが。
 まず3人のうち、マックス・マーキュリーですが、実は彼は、「肉体をとある敵に乗っ取られた」ために、長年行方不明だったんですがね。とりあえず、このシーンを見る限りは、「肉体は奪われたものの、精神の方はスピードフォースと一体化していた」っつーことが判明しました。
 同様に、2代目フラッシュも、『クライシス・オン・インフィナイト・アーシズ』事件後の帰趨が、「死亡した/光になった/行方不明になった/スピードフォースと一体化した」など、諸説あったのですが、このシーンによって、やはりスピードフォースと一体化していたことが判明しました。
 また、彼らスピードフォースと一体化したスピードスターたちは、(どのような状態になっているかはさておき)死亡したわけではなく、またそれぞれの自我も、依然、保っているであろうことが、このシーンからは推測できます。
 もしかしたら、「何らかの意志を持っている」とされる、スピードフォースの「意志」の正体は、彼らスピードフォースと一体化したスピードスターに他ならない、かもしれませんな(ま、作中で明言されてませんので、ここで断言する気はありませんが)。

 さて、この『インフィナイト・クライシス』でのスーパーボーイ・プライムとの戦いの結果、スピードフォースは消滅しちまいまして……以降、DCユニバースにおけるスピードスターは、初代フラッシュただ1人となります。
 何故にスピードフォースが消えたのに、初代フラッシュがスピードスターとして活躍できてんのか? と、いいますと、「実は、初代フラッシュは、元々高速移動能力を発揮するメタジーン(※)の持ち主だった」ことが判明したからです。
 だもんで、初代フラッシュは、『インフィナイト・クライシス』後も、スピードスターとしての活動を継続しています。ただし、スピードフォースの恩恵がないため、最高速度が音速程度にまで落ちています。

(※)メタジーン:地球人類の遺伝子に含まれる「超能力因子」のこと。主に、外的な要因(死ぬような危機に直面した時など)によってこの因子が発現し、なんらかの超能力が使えるようになる。
 つまり、DCユニバースにハルク(っぽいヒーロー)がいた場合、彼の超能力が発現した原因は、「ガンマ線の未知の力でハルクへの変身能力を獲得したから」ではなく、「致死量のガンマ線に被爆したことでメタジーンが発現し、ガンマ線に耐性を持つハルクへの変身能力を獲得したから」な感じになります。
 このメタジーンっつーのは、DCユニバースの超能力の獲得方法に「統一理論」をもたらす、画期的なガジェットなんですが、「浪漫がない」のが最大の弱点です。だってさぁ、「ユカタン半島に伝わる幻の果実・ジンゴの濃縮果汁を飲んで、両手足が伸びるようになった」っていう、ワンダーなオリジンが、「ジンゴの果汁が、ラルフ個人の遺伝子に含まれるメタジーンを刺激し……」とかいい直されても、ねぇ。
「アワーマンのミラクロピルは、彼のメタジーンにのみ適合するので、彼以外が飲んでも効かない。でも、彼の遺伝子を受け継ぐ息子ならOK」とかいう風に発展させたのは好きだけど。
 ちなみにこの設定の発案者はキース・ギフェン先生(『インヴェーション!』より)


 まぁ、初代フラッシュがこれまでメタジーン・ポジティブだったなら、かつてセヴィターとの戦いの際、スピードスターとスピードフォースとの接触が断たれた時、初代フラッシュが高速移動できなくなってたのはおかしくないか、とかいうツッコミもなくはないのですが(ま、「インフィナイト・クライシス事件での時空の混乱によって過去が変わった」とか、「インフィナイト・クライシス事件の直後に遅まきながらメタジーンが発現していた」とか、解釈はいくらでもつけられますが)。

 で、一方で、消滅したかに思われていたスピードフォースですが、『インフィナイト・クライシス』後に創刊された新『フラッシュ』オンゴーイングシリーズ(インフィナイト・クライシス事件から1年後のDCユニバースが舞台)で、驚きの事実が判明します。

 実は、くだんのスーパーボーイ・プライムとバート・アレン(元インパルス/元2代目キッド・フラッシュ/新『フラッシュ』の主人公)が、スピードフォースに突入した際、スピードフォースは完全に消滅したのではなく、いくらか残ったエネルギーがバートさんの肉体に吸収され、彼と一体化していたのであります。
 これにより、『インフィナイト・クライシス』後、スピードフォースとの接触を断たれ(たと、思いこんで)、キッド・フラッシュを引退していたバート・アレンくんは、やがて、スピードスターとしての能力を完全に取り戻し、4代目フラッシュとして活動を再開します。

 がー、ですな。それから約1年で、「スピードフォースの体現者はバート1人」な、この新設定も一変しちまいます。


※えー、ここからは、こないだ打ち切られた『フラッシュ』第4シリーズと、『ジャスティスリーグ・オブ・アメリカ』&『ジャスティスソサエティ・オブ・アメリカ』両誌のネタバレになるんで注意。


 さて、手短にいいますと、『インフィナイト・クライシス』後に、4代目フラッシュを新主人公に迎えて創刊された『フラッシュ:ザ・ファーステストマン・アライブ』誌が、ですな……微妙に人気がなくて、その、打ち切られることになりまして。

 その最終号である『フラッシュ:ザ・ファーステストマン・アライブ』第13号にて、フラッシュ(バート)は、仇敵イナーシャの生み出した機械により、体内に宿ったスピードフォースを吸収されます。パワーを失ったバートは、なおも戦おうとしますが、キャプテン・コールド、ヒートウェーブ、ウェザー・ウィザードらの一斉攻撃を受け、死亡します。

 一方、『インフィナイト・クライシス』事件で、時空の彼方に消失したはずの3代目フラッシュこと、ウォーリー・ウェストは『ジャスティスリーグ・オブ・アメリカ』誌 第8~10号と、『ジャスティス・ソサエティ・オブ・アメリカ』誌 第5~6号とのクロスオーバー・イベント「ライトニング・サーガ」事件にて、元の世界に帰還を果たします。

 でー、結果的には、フラッシュ(4)の体内のスピードフォースが解放されたことで、『インフィナイト・クライシス』以降のスピードフォースの設定は新設定は、ウヤムヤになりまして、元の状態に戻ったようです。

 めでたし、めでたし(スケープゴートにされたバートくんはめでたくも何ともねぇですが)。


●おまけ:スピードスターな方々:

▼フラッシュ(1):
 ジェイ・ギャリック。アメリカン・コミック史上初のスピードスター。希元素ハードウォーターの揮発したガスを吸い込み、スピードフォースに接触する能力を得る。現行の設定では、ジェイが正義の味方になったのは、パルプ雑誌に掲載されていたウィップ・ホイールウィンドの小説の影響が大きかったとか。キーストーンシティにて現役。
 戦後に、恋人ジョーンと結婚。子供はないが、現在も円満な夫婦生活を過ごす。
 現在は、スピードフォースとの接触する力はなくし、メタジーンによる超能力で、高速移動している……と、思いきや、まぁ、色々あってスピードフォースとの接触技能は復活した模様。

▼フラッシュ(2):
 バリー・アレン。セントラルシティ在住。落雷によって帯電した化学薬品を浴び、スピードスターの能力を得る。後に、恋人のアイリス・ウェストと結婚。アイリスの従弟である、ウォーリー・ウェストの叔父になる。後にバリーは引退し、アイリスと共に30世紀の未来にて過ごす。
 が、『クライシス・オン・インフィナイト・アーシズ』事件の際、フラッシュに復帰。この事件の黒幕アンチモニターのアンチマター・キャノンを破壊するため、限界を超えて能力を使用した結果、スピードフォースと一体化した。
「光となったバリーは時空を遡り、落雷となって12年前のバリーに能力を与えた」という設定は、現行では無かったことにされてます。気を付けましょう。
 あと、マーヴ・ウルフマンによる小説版『クライシス』では、実は某キャラクターがスピードフォースに接触できるようになったのは、スピードフォースに突入したバリーが関与していた……とかいう描写もありますが、まぁ、これも気にしない方向で。

▼キッド・フラッシュ(1):
 ウォーリー・ウェスト。後のフラッシュ(3)。伯父であるバリー同様、落雷&化学薬品を浴びて能力を得る。
 後に未成熟な内に超能力を得た副作用で、「超能力を使うと寿命が縮む」ことが判明し、タイタンズのチームメイトだったロビンと共にヒーロー活動から引退(ロビンはその後、ナイトウィングとして復帰したのはご存じの通り)。

▼フラッシュ(3):
 一時期引退していたキッド・フラッシュことウォーリー・ウェストが『クライシス』後、死亡した叔父の跡を継いで新フラッシュに。上記の「超能力を使うと寿命が縮む」病気は、『クライシス』事件のさなかに、エネルギー波に打たれた影響で快癒(いいのか、それで)。
 程なく、初代フラッシュの妻ジョーンの薦めでキーストーンシティへ引越し。そこにて出会ったレポーターのリンダ・パークと恋人になり、紆余曲折を経て結婚。後にリンダとの間に双子をもうける。
『インフィナイト・クライシス』事件の際、リンダと双子と共に、異次元に消失した、かに思われていたが、現代に到来したリージョン・オブ・スーパーヒーローズのメンバーらによって、「彼方」より帰還。その直前に退場したフラッシュ(4)に代わり、再びフラッシュとしての活動を再開する。

▼インパルス:
 トルネード・ツインズ(後述)のドン・アレンと、メローニ・ザウンの息子で、バリーとアイリスの孫。ちなみにメローニはリバース・フラッシュの子孫。30世紀生まれ。生まれたときからスピードフォースへの接触技能を持っていた。能力の制御が出来ないため、祖母アイリスによって現代に連れてこられ、フラッシュたちのもとで指導を受けることに。
 後にキッド・フラッシュ(2)に改名。インフィナイト・クライシスを経て、フラッシュ(4)を襲名。

▼フラッシュ(3)ダッシュ:
 ウォルター・ウェスト。別次元の3代目フラッシュ。その次元にも存在していたセヴィターを倒した際、その技量の多くを自分のものとした。性格はウォーリーよりも残忍で衝動的で思いこみが激しい(ヒドイなぁ)。
「チェイン・ライトニング」事件でウォーリーが次元の彼方に消失した直後、入れ替わりでこの次元に顕現。一時期ウォーリーに代わり、フラッシュとして活動していた。
 後、異世界出身のウォルターが、この次元に長く留まり続けると、次元間に悪影響を与えることが判明したため、超光速を突破して“ハイパータイム”に突入。この次元から去る。元の世界に戻れたかは不明。

▼フラッシュ(4):
『インフィナイト・クライシス』事件から1年後、スピードフォースとの接触技能を取り戻したバートが、フラッシュ(3)の跡を継いで、新フラッシュになる。


▼アウェホタ<Ahwehota>/ウィンドランナー:
 19世紀頃に活躍した(設定上は)史上初のスピードスター。元は、騎兵隊の連絡係の青年が、ネイティブ・アメリカンのシャーマンの呪術によって高速移動能力を得たもの。彼はこの能力を用いて、騎兵隊とネイティブ・アメリカンとの無用の衝突を防ぎ、以降も、その力を人々のために用いていく。
 アウェホタは、ネイティブ・アメリカンの言葉で“風に乗りて駆けるもの”の意。

▼ウィップ・ホィールウィンド:
 19世紀末頃に活躍した、史上2番目のスピードスター……と思いきや、実は、スピードフォースに突入しかかり、しかし「弾かれた」ために時空を跳躍し、その時代に顕現したウィンドランナー。以降、この名を名乗って活動。

▼クイックシルバー:
 コミック史上2番目のスピードスター。元々はクォリティ・コミックス社のキャラクター。現行の設定では、実は、再度、時空を跳躍したウィンドランナー/ウィップ・ホィールウィンドが名乗っていた別名(ちなみにゴールデンエイジ当時、クィックシルバーの本名&オリジンが語られたことはなかったりする)。
 身よりはないが、1950年代に人妻と不倫した結果、娘が1人できる。

▼ブルーストリーク:
 1950年代末に活躍したスピードスター、と見せかけて、1957年頃に時空跳躍したクイックシルバーが名乗っていた名前。1950年代に、この名前のヒーローのコミックが存在していたわけではないので注意。

▼マックス・マーキュリー:
 一時期引退していたシルバーストリークが、「リターン・オブ・バリー・アレン」事件のさなかに、フラッシュ(1)の要請を受けて復帰。以前使っていた「クイックシルバー」の名前は、マーヴル・コミックス社が商標を獲得しちまってるため、マックス・マーキュリーなる名前で活動再開。
 後に、何の因果かインパルスの保護者に。
 近年、フラッシュ(1)の旧敵ザ・ライバルに肉体を乗っ取られる。残された精神はスピードフォースと一体化した模様。


▼ジョニー・クイック:
 本名ジョニー・チャンバース。コミック史上3番目(DCでは2番目の)スピードスター。4次元にアクセスする空間構造式「3X2(9YZ)4A」を唱えることで、スピードフォースにアクセスできる人。
 とりあえず、キャラがかぶってるフラッシュとの差異化のため「空も飛べる」ことにされる。
 後にスーパーヒロインのリバティ・ベレと結婚。娘ジェシーを授かる。1950年代にヒーローを引退した後は、健康食品の会社を興し、資産家となる。
「デッドヒート」事件で、レディ・セヴィターから娘を守るため、限界を超えた能力を発揮、結果スピードフォースに突入し、この次元から消失する。

▼ジェシー・クイック:
 本名ジェシー・チャンバース。ジョニー・クイックと、リバティ・ベレの娘。父親から次元式を教わり、スピードフォースに接触することが可能に。
 後に、フラッシュ(3)とズームとの戦いの際、フラッシュに彼女自身のパワーを貸したことでスピードフォースとの接触技能を失う(実際には、回復することはできたのだが、あえて回復しないことを選択)。
 以降、父親の残した会社の経営に専念していたが、『インフィナイト・クライシス』から程なくして、母親であるリバティ・ベレ譲りの超能力(怪力、耐弾性ほか)が突如発現。2代目リバティ・ベレとして、ジャスティス・ソサエティ・オブ・アメリカに参加。またフラッシュ(4)の退場を受け、スピードフォースとの接触技能も復活した模様。

▼キャプテン・ブーメラン(2):
 本名オーウェン・マーサー。フラッシュの仇敵である初代キャプテン・ブーメランの息子。
 かつてキャプテン・ブーメランは、フラッシュ(2)との戦いで時空流に巻き込まれ、記憶を失った状態で30世紀に顕現。そこにて遭遇したメローニ・ザウン(バート・アレンの母親)との間に生まれたのがオーウェンになる。
 つまりはバート・アレンの異父兄弟なのだが、ブーメランが顕現した時代がバートの誕生前なのか、それとも後なのかは不明なため、どっちが兄なのかは謎。
 後に不明の理由により30世紀から現代に転送され、オーウェン・マーサーとして過ごす。
 後に、彼の存在を知ったキャプテン・ブーメランは、逡巡の末に息子と対面。彼に自身の持つブーメランの技術を教え込む。直後、ブーメランは死亡(詳細は『アイデンティティ・クライシス』読め。いや読むな)。オーウェンは父の跡を継ぎ、2代目キャプテン・ブーメランとなる。
 ザウン家の血筋に連なるせいか、微妙にスピードフォースとの接触が可能で、父親が危険に瀕した際、無意識に高速移動能力を発揮したことがある。『インフィナイト・クライシス』以降、その能力は消失した模様?
 バートの義兄弟なのだが、作中では遂に対面することはなかった。

追記:2007年9月に出た、『Outsiders Five of a Kind Week 1: Nightwing Boomerang』(長い)で、オーウェンが高速移動能力を発揮してました。どうもスピードフォースが戻ったことにより、高速移動能力が回復した模様。意識して能力を発動できるようになっているが、一方でまだ能力の行使に不慣れなこともあり、音速に達するのがせいぜい、といった所。


▼ジェイ・ウェスト&アイリス・ウェスト:
 フラッシュ(3)ことウォーリー・ウェストと、リンダの間に生まれた双子。それぞれ、生まれた直後にスピードフォースとの接触技能が発現。詳細は現行の『フラッシュ』読め。<いい加減。


▼ブルートリニティ:
 フラッシュを参考にソビエトが自力開発した3人のスピードスターのチーム。最初に実験の献体となった彼らは、高速移動能力と引き替えに、精神が不安定になる。
 内1人クリスチーナ・アレクサンドロノフは、後にレディ・フラッシュを自称したり、レディ・セヴィターになったりと、かなりくトラブルメーカーだったり。

▼レッドトリニティ:
 フラッシュを参考にソビエトが自力開発した3人のスピードスターのチームの、一応の完成版。精神的にも安定している。後にアメリカに亡命。

※ブルー&レッドトリニティはスピードフォースと接触しているわけではなく、特殊なステロイドの摂取や、特殊な電極の埋め込み、遺伝子改良などの複合により、高速移動能力を獲得している。その上限は音速程度。


▼プロフェッサー・ズーム/リバース・フラッシュ:
 エオバルド・ザウン。25世紀出身。フラッシュマニアの未来人が常軌を逸して誕生した悪のフラッシュで、20世紀に到来しては悪さをくり返す。フラッシュ(2)の生涯の仇敵。
 時間旅行系のキャラだけに、オリジンは微妙に錯綜しているので、知りたきゃ『バリー・アレンの帰還』のTPB読め。
 バリーの妻、アイリスを殺害(後に色々あって、死んでなかったことになるが)。更に後、バリーの新たな婚約者を狙う。この時、ズームはバリーによって強引にブレーキをかけられ、その反動で彼の首の骨が折れ死亡する。
 が、現在の『フラッシュ』誌上にも“死ぬ前の時点のズームが時を超えてやってきた”とかいう感じで、時折、健在な姿で登場する難儀なヤツ。

▼セヴィター:
 冷戦時代、東側のテストパイロットが飛行中にスピードフォースと接触し、誕生したスピードスター。スピードフォースを狂信的に崇めており、彼の神にふさわしくない他のスピードスター(ジョニー、ブルーストリーク※)を排除しようと画策。が、ブルーストリークスピードフォースに突入し消失。
 が、スピードフォースに弾かれたセヴィターは、『ゼロ・アワー』事件の直後の時点に顕現。他のスピードスターのスピードフォースとの接触を断った上で、彼らを抹殺しようとする。が、ウォーリーとの最終決戦で今度は本当にスピードフォースに突入し、この世界から消え去る。
※この時代、フラッシュ(1)は故郷のキーストーンシティ共々、異次元に封じられていた。<『インフィナイト・クライシス』以降もこの設定残ってるのかなぁ……。

▼ズーム(2):
 もとフラッシュ(3)の友人だったプロファイラーのハンター・ゾロモンが、時空エネルギーに被爆して高速移動能力を獲得した存在。色々あってフラッシュを逆恨みし、2代目のズームとなる。
 フラッシュ以上の高速移動能力を持つが、実はズームの能力は、自分の周囲の時間流を任意に操作するというものであり、スピードフォースからエネルギーを引き出してるワケではない。
 ……要するに、ズームは、回りの時間の流れをうんと遅くできるんだけど、ズーム自身はその空間を普通に移動出来るですよ。でー、例えばズームが秒速1メートルで走りつつ、周囲の時間の流れを1/1000にすると、周囲の人間にとっては、ズームは秒速1000メートルで走ってるように見えるんですわ。
 その、ドラえもんのひみつ道具の「狂時機(マッド・ウォッチ)」と同じ能力なんだけど、知らん?
 ……ただ、結局はズームの体感時間を速度と交換してるだけなんで、能力を行使すればするほど、ズームは年老いていくって欠点があるような……。
 あと、速度×時間分の距離を、実際にズーム自身が移動しなければならない、っつー致命的な欠点もあるし……(秒速10万キロを1分間維持するには、とりあえず、600万キロを自力で移動しなけりゃならない。時間の歩みを極限まで遅くした上で、ノロノロ歩いて600万キロ移動してもかまわないが、体感時間が限りなく犠牲になる)。
※ま、これらの弱点はコミック中では無視されてるんで、気にしないようにしよう。

▼イナーシャ:
 バート・アレンの祖父、ザウン大統領(プロフェッサー・ズームの子孫で、娘がアレン家に嫁いだことがどうしても我慢できない)が、孫に対する愛憎の結果、生み出したバートのクローン人間。バートと同じ遺伝子を持つため、スピードフォースへの接触技能を持つ。
 かつて、インパルス時代のバートを狙うが、自らの命を賭けてマックス・マーキュリーを救おうとしたバートの姿に、“復讐の道具”としてのみ作られた己のアイデンティティを揺らがせ敗北。
『インフィナイト・クライシス』後、イナーシャはフラッシュ(1)らと同様に、スピードフォースとの接触技能を喪失。代わりに、デスストロークより供与された麻薬「ヴェロシティ9」を用いて、高速移動能力を得る(音速程度)。その縁で、デスストロークのタイタンズ・ウェストにも参加したり。
 バートがフラッシュ(4)になった後は、フラッシュの仇敵達(通称:ローグス・ギャラリー)を招集し、彼らを騙して手駒として使い、バートのスピードフォースを奪おうとした。が、バートの体内からスピードフォースを引きずり出すものの、それを自身の物とすることは失敗。
 彼のその後の運命は、こないだ出た『オール・フラッシュ』増刊号を参照のこと。

▼ザ・ライバル:
 本名ドクター・クラリス。フラッシュ(1)ことジェイ・ギャリックの大学の恩師。彼は偶然、フラッシュの正体を知ったのをきっかけに、数年の歳月をかけて、スピードフォースに接触する方法を開発。フラッシュに似たコスチュームをまとう、謎の怪人ザ・ライバルを名乗り、更にスピードスターによるギャング団を結成して悪事を行う。
 が、彼らの超高速移動能力は、一時的なものであり、配下らの能力が切れた所をフラッシュ(1)にまとめて倒される。これが1949年のこと。その後、彼は再びパワーを回復し、フラッシュと交戦するが、激戦の果てにスピードフォースに引き込まれる。
 近年、ライバルは、悪人ジョニー・ソローによって、スピードフォースから開放され、彼のインジャスティス・ギャングに加入。新生JSAに所属していたフラッシュ(1)と再戦するも、スピードフォースの接触能力に熟達したフラッシュに破れる。
 その後、純粋なエネルギー体に変質したライバルは、マックス・マーキュリーの肉体を乗っ取り、いずこかの時代へ逃亡する。

▼ジョニー・クイック(その2):
 初代ジョニー・クイックの親類、ではなく、『ジャスティスリーグ・オブ・アメリカ』(vol. 1)#29 [1964/8]にて初登場した、悪のスピードスター。
 我々の世界とは価値観が正反対で、スーパーマン、バットマンらが悪人として活躍し、悪人軍団クライム・シンジケートを結成している異世界アース3に住む。能力的には当時のフラッシュ(2)とほぼ互角。

▼ジョニー・クイック(その3):
『クライシス・オン・インフィナイト・アーシズ』で、アース3が消滅&歴史が書き換わったのを受けて、ポスト・クライシスの世界観に登場したジョニー・クイック。っつーか、厳密には“登場”したわけではなく、「かつて、クライム・シンジケートという悪人軍団がいた」的な回想シーンで、背景に描かれたのが唯一の登場。
 このバージョンの彼は、アース3ではなく、異世界アンチマター・ユニバース出身のクワード人で、フラッシュに似た能力・コスチュームを見につけている。クワード人なので、常に目を真ん丸く見開いてるのがチャームポイント。

▼ジョニー・クイック(その4):
「ハイパータイム」の設定が元気だった頃に発表されたグラント・モリソン作の、『JLA:アース2』に登場する悪のスピードスター。
 アンチマター・ユニバースに存在する、地球に良く似た星(やはり、我々の世界とは価値観が逆転していて悪が常に勝利を収める)の悪人軍団、クライム・シンジケート・オブ・アメリカに所属。「スピード・ジュース」と呼ばれる麻薬により、スピードフォースとの接触技能を得る。

▼ジョニー・クイック(その5):
『インフィナイト・クライシス』後に誕生した「52ユニバース」内のアース3に住む悪のスピードスター。設定は、ジョニー・クイック(その4)のソレが大体踏襲されてる模様。ただし、所属チームは「クライム・ソサエティ」。


▼フラッシュ(ver. c27):
 ジョン・フォックス。27世紀出身の高速移動能力者。一時、未来に時空跳躍したフラッシュ(3)に代わり、現代のキーストーンシティの平和を守っていた。後に857世紀に飛びジャスティス・リージョンAに参加。

▼フラッシュ(3)(ver. KC):
『キングダム・カム』他に登場。ウォーリー・ウェスト。名前は同じでも、ウォルターと同じく別次元の3代目フラッシュ。なぜか初代のヘルメットを着用。
 一応、『インフィナイト・クライシス』後の、多次元宇宙が復活したDCユニバース(52ユニバース)においては、『キングダム・カム』の世界観は、アース22に相当する模様。なので、この人(厳密には、限りなくそっくりな別人)も、一応DCユニバース内にいる模様。

▼キッド・フラッシュ(ver. KC):
『キングダム・カム』、『タイタンズ』他に登場。ウォーリー・ウェストとその妻アンジェラ・マルゴルン・ウェスト(※アイリスでない点に注意)の娘。


▼トルネード・ツインズ:
 ドン・アレン&ドーン・アレン。『クライシス』で死んだバリー・アレンと、アイリス・ウェスト・アレンの間に授かった双子の子供。30世紀生まれ。異星人ドミネイターズの侵略軍との戦いで死亡する。
 ただし、2人共に、その戦いの以前に子供を授かっており(バートとジェニ)、フラッシュの血は耐えることなく後の時代に受け継がれる。

▼XS:
 本明ジェニ・オグナッツ。ドーン・アレンの娘で、バートの従妹。30世紀生まれ。インパルスとは異なり成長後にスピードフォースが発現。後に30世紀のヒーローチーム、リージョン・オブ・スーパーヒーローズの一員。
 が、近年、リージョン・オブ・スーパーヒーローズの歴史が書き変わり(リセットされ)、それ以降、XSはコミックには未登場。「今の『リージョン』のライター、マーク・ウェイドはXSの生みの親だし、出すよ、その内」などといわれて、はや3年……。「彼女の従兄のバートが消失していないんだから、XSも歴史からは消えていないはず」とは、いうものの。
 ……とりあえず、最近の『ジャスティス・ソサエティ・オブ・アメリカ』第7号で、スターマン(8)がXSの名前を言及してるけど……このスターマンって、消滅したはずの過去の無数の設定を脈絡なく口にするっつー、「あたまがおかしい」人なんで、その言を信用すべきかは……微妙。

タグ:アメコミ講座

●スーパーボーイは、ジェリー・シーゲルの著作物だった。その5(まだ続いた):

2007.04.07 Sat

 あー、前回で終わりだったはずですが、なんか、色々と(余談だけども)書きたいことができたんで、もっかいやろうかと。

 っつーわけで、スタート(つか、も少し導入に気を配れ、俺)。


▼余談追加その1:スーパーボーイ(コナー・ケント)は、やっぱり、法的に問題あるかもしれない。

「NEKOMISO+」さんで、3月末に紹介されてた、Karl Kerschl(名字の読みが解らん)のブログの記事。

This is a job for...Wonder Girl?

 ま、簡単に言いますと、『52』#47のバックアップに掲載される、ティーン・タイタンズのオリジンのページで、ペンシラーのKarl Kerschlが当初スーパーボーイ(コナー・ケント)を描いてたら、「法的な理由」で、スーパーボーイを載せらんなくなって、代わりにワンダーガールの絵にした、という話。

 前回(その4)で、「コナー・ケントさんは、シーゲル家の持つスーパーボーイの著作権的には、さほど抵触してないのだぜ」的に、偉そうに書きましたが、そうでもないやもしれませんね。すいません。

 まぁ、こう、「法的に問題なさげだけど、万一のことを考えて、描かないでおこう」的に、現場の判断で決まったかもしれませんが(<未練がましいです。やめましょう)。

(2007/12/20追記:現状のDCコミックスではスーパーボーイ(コナー・ケント、スーパーボーイ・プライム)は、
1)絵にする時は、「あまりアップにしない」、「胸のSマークは絶対に描かない(影にしたりする)」、などして、「スーパーボーイである」とハッキリ分かるような絵にしていない。
2)セリフなどで言及する時は「コナー」とか「プライム」などといった具合に呼ばれ、「スーパーボーイ」という単語は一切使われない。
3)スーパーボーイ・プライムに至っては、「スーパーボーイ・プライム→スーパーマン・プライム」と、改名された。
 と、いった具合に、徹底して「スーパーボーイ」という存在、名前がコミック上にでないような配慮が成されている。
 一方で、カートゥーン版『リージョン・オブ・スーパーヒーローズ』には、あいかわらず“ヤング・スーパーマン”が登場し、そのコミック版として、DCが発行している『リージョン・オブ・スーパーヒーローズ・イン・ザ・サーティファースト・センチュリー』にも、やはり“ヤング・スーパーマン”がレギュラーとして登場している。
 ……DCコミックスと、親会社のワーナーブラザーズでは、対応が違ったりするのかなぁ。


▼余談追加その2・シーゲル&シャスター以外の作家の、著作権契約の話。

 その、別に調べてた訳じゃねぇけど、最近読んでた資料に、ゴールデンエイジ期のコミック作家で、シーゲル&シャスターとは異なった形で、出版社と契約してた人のエピソードを見つけたんで、ついでに書き記すナリ。

その1:ジョー・サイモン&ジャック・カービィ:

 まぁ、おなじみ「キャプテン・アメリカ」の作者のコンビですね。

 で、彼らは、マーヴル・コミックス(当時の正式な社名はタイムリィだっけ、アトラスだっけ? ……確認するの面倒くさいんで、以降もマーヴル・コミックスで記述しますが)のパブリッシャー、マーチン・グッドマンの要請で、「キャプテン・アメリカ」を作ったわけですが。この制作途中で、サイモンは、

「あれ? この新キャラクター、凄く魅力的で、凄く人気が出るキャラクターになるんじゃね?」
とか、気づいてしまうわけですよ(まぁ、実際に「なってしまった」わけですが)。

 でー、お金大好きなサイモンは、(当時の業界では、まだまだ2流の出版社だった)マーヴル・コミックスに作品を渡すより、もっと大手のナショナル・パブリケーションズ(後のDCコミックス)や、フォーセット・コミックスに売った方が儲かるぞ、などと考えます。

 賢明ですね。

 でー、既に、サイモンから、キャプテン・アメリカのラフなんかを見せられてて、やっぱり、
「こいつは売れるぜ!」
と、乗り気だったグッドマンは、
「うーん、ヨソならもっと高く買ってくれるだろなぁ、フフン?」
的な態度でゴネだしたサイモンと話し合うことになりまして。

 結果、サイモンとグッドマンは、

1.マーヴル・コミックス社が「キャプテン・アメリカ」から得る収益の15%を、印税としてサイモン&カービィに支払うこと。

2.「キャプテン・アメリカ」を、いきなり独立誌として創刊すること。

 という、実にサイモン側にとって有利な条件で、契約を結ぶこととなりました。

※この当時のコミック誌は、1冊5、60ページくらいで、複数のコミックや読み物を収録した、アンソロジー形式が主流。で、雑誌の連載作品の中で、特に人気の高いものを独立誌として創刊する、ってのが、「あるべき」流れでした(っつーても、独立誌を獲得できたのは、この当時では、「スーパーマン」「バットマン」「キャプテン・マーヴェル」といった、コミック市場の中でも、頂点を極めたキャラクターのみでしたが)。
 でー、独立誌を得ること自体が稀なのに、ここで紹介しちょる「キャプテン・アメリカ」のように、(アンソロジー誌での連載を経ず)いきなり独立誌が創刊、ってのは、さらに稀なことでありました。注釈長ぇな畜生。


 でー。

 晴れて創刊されました『キャプテン・アメリカ・コミックス』ですが。
 その創刊号は、サイモン、そしてグッドマンの思惑通りに、100万部近くが売り切る、という、大大ヒット振りを記録するわけです(当時は、「スーパーマン」あたりが、毎号100万部前後。『キャプテン』は、いきなりそのクラスに喰い込んじちまった、と)。

 えーと、当時のコミックブックが、1冊10セントですから、1冊あたりのサイモンらへの印税は、1.5セント。それが、仮に100万部売れたとすると、150万セント……1万5千ドルですか。月収で。凄ぇぜ!

 が、実はグッドマンは、じきに(あるいは最初から)、この印税の支払いを、ごまかしやがりまして(ありがちですね)。

 およそ1年後、サイモン&カービィは、マーヴルの会計士を勤めていたモリス・コインより、グッドマンが彼らに正当な印税を支払ってなかったことを伝えられます。
 実に正直な、会計士の鏡ですね。

 ……ま、実はこのコインさんは、当時、マーヴルの競争相手だったMLJコミックス社の株を買ってまして。

カービィ&サイモンに本当のことを言う→サイモン&カービィ怒ってマーヴルを離脱→MLJに移籍?→MLJの株急上昇

とかいう「風が吹けば桶屋が儲かる」理論を狙って、明かしちゃったらしいんですが。大人ってやぁねぇ。

 で、この後、コインズの思惑通り、サイモン&カービィはマーヴルに憤るんですが。コインズの期待に反して、彼らはMLJではなく、ナショナル(後のDCコミックス)と接触します。
 結果、サイモン&カービィは、マーヴルの契約社員として働く傍ら、マーヴルにはナイショで、週500ドルの給料で、DCコミックス向けにも原稿を描くこととします。前向きですね(ちなみにこの当時のサラリーマンの平均的な年収は2000ドルくらい)。

※こっから先は、割と眉唾で読んでね。

 が、2人のこの秘密の行動は、ですな。なぜだか、1人の青年に気付かれちまいます。その男、ってのが当時マーヴルで働いてた、グッドマンの甥のスタンリー・マーチン・リーバーって野郎なんですが。

 でー、リーバーは、サイモン&カービィを尾行しだしまして、遂に彼らがナショナル向けの原稿を描く仕事場としていたホテルを見つけだします。

 サーモン&カービィは、シブシブ実状を話して、
「どうか、このことはグッドマンにナイショにしててね♪」
とか、この若造に言ったんですが。

 正直なんだかイジワルなんだか、このリーバー、すぐに叔父の元へ行きまして。サイモン&カービィの「裏切り」を報告します。
 無論、グッドマンは(自分の印税のゴマカシは棚に上げて)、即座にサイモン&カービィをクビにしまして。
 かくて、サイモン&カービィは、円満に(<ヲイ)、ナショナルに移籍しましたとさ。

 めでたし、めでたし。


余談:なお、この当時、ジョー・サイモンはマーヴルの編集長、ジャック・カービィはアートディレクターを勤めておりまして。
 その彼らをクビにしたことで、(グッドマンはともかくも)マーヴルの編集部は、えらく混乱しました。

 で、ですな。
 この後、マーヴルの編集長とアートディレクターの両職に就任したのが、くだんのグッドマンの甥、スタンリー・リーバーでした。
 ……外様に裏切られたんで、身内を重職に据えた、っつーことですかね。

 ……こう、この人事を考えると、リーバーがサイモン&カービィの所行をグッドマンに話しちまった理由を勘ぐりたくなりますな

 その後、スタンリー・リーバーは、第2次世界大戦で、一時マーヴルを離れるものの、戦後、再度マーヴルの偉い人に復帰。けど、戦後、コミックが売れなくなって、おまけに流通業者がツブれて、あきらめて会社を閉じようとした所、戦後、色々あって職にあぶれたジャック・カービィがマーヴルを訪れ……って、面倒くさいんで、スタンリーの一代記はここでも読め。

 めでたし、めでたし。


その2:ウィリアム・モールトン・マーストン<William Moulton Marston>:

「誰?」とかいうツッコミが聞こえてきそうですが、「ワンダーウーマン」の作者の人です、はい。
(まぁ、「ワンダーウーマン」は、チャールズ・モールトン<Charles Moulton>の筆名で書いてたんですが)。

 この人はハーバードのロースクール出身で、しかも、当時のDCコミックス(正確には、ナショナル・ピリオディカル・パブリケーションズと、オールアメリカン・コミックス)の教育的相談役もしてたんで、相応の待遇で、契約を結んでいたのではないかと思われます。

 ちなみに、ウィリアム・マーストンは、1947年に皮膚ガンで死亡しまして、残された奥さんは唯1人で、自分の2人の子供と、旦那の愛人と、愛人の産んだ2人の子供(法的にはマーストン家の養子になってる)を養った上(※愛人の人は、旦那の生前からマーストン家で生活をしていた)、4人の子供全員を大学までやったそうで(しかも、1人はロースクールへ、もう1人は医学校へ進学した)。

※マーストンの実に奇妙な生涯については、そのうち単独のエントリで語れると良いですね。

 で、奥さんは、大学講師で、しかもブリタニカ百科事典の編集者、っつー、当時の女性としては破格の経歴&収入があった人ですが、それでも4人の子供を大学にやるに当たっては、旦那の残した『ワンダーウーマン』の印税が、手助けとなったことは想像に難くないです、と。

 まぁ、どの程度の印税をもらってた、とかは、資料が見つからなかったんですが、ウィリアム・マーストンが、DCコミックスとの間に、それなりに周到な契約を結んでいたことをうかがわせる、事例がございまして。

 それは、DCとマーストンの契約には、
「DCが、1年間で4話分以上の『ワンダーウーマン』のコミックを出さなかった場合、同作の著作権がマーストン家に戻る」
 っつー条項が、あるそうなんですわ。

 この条項は、多分、出版社が著作権を所持していながらコミックを出版しない、いわゆる「塩漬け」状態にするのを防ぐためのモンでしょうが。
 そんな細かな条項も盛り込むくらい、相当にきちんとした契約書を取り交わしてたんだろうなぁ、と、思う次第ですわ。

 めでたし、めでたし(マーストン家が)。


 余談:およそ20年前、DCコミックスは、1985年の『クライシス・オン・インフィナイト・アーシズ』イベントに併せ、1985年末に一旦『ワンダーウーマン』のコミックを打ち切りまして(最終号は第329号・カバーデート:1986/2)。
 その後、設定を一新した新シリーズ『ワンダーウーマン』(vol. 2)を創刊する、と言うことを試みてたんですが。

 が、この新シリーズの立ち上げが、微妙に難航してた様でして(新シリーズのライター、グレッグ・ポッターが創刊号で下ろされ、2号からはアーティストのジョージ・ペレズがライターも担当するようになった、とかいう経緯を見るに、まぁ、色々あったんでしょう)。

「この分だと、1986年内に新シリーズを4冊出せない可能性もある」
と、判断したDCは、ゴールデンエイジのワンダーウーマンを回想する全4話のミニシリーズ『レジェンド・オブ・ワンダーウーマン』を送り出して備えたそうですわ。

 結局、ペレズの『ワンダーウーマン』第2シリーズは、創刊号が1986年末に出まして(カバーデート:1987/2。第1シリーズ最終号の丁度1年後)。DCの判断は、まさしく正解だったのですが。

※ちなみに、現在、DCは『ワンダーウーマン』の権利を完全に買い上げた(もしくは、その条項を除いて契約を更改した)ので、この条項を気にする必要はなくなったんだとか。


 っつーわけで、今度こそオワル。

タグ:アメコミ講座

●スーパーボーイは、ジェリー・シーゲルの著作物だった。その4(余談風):

2007.03.30 Fri

 うぃす。

 ちと前回から間が空きましたが、長々続けてきた「スーパーボーイは、ジェリー・シーゲルの著作物だった。」シリーズ最終回気味なソレで。

 今回は「以下、余談」な話をしようかと。

▼余談その1:著作権を持っていても、シーゲル家は「スーパーボーイ」のコミックを出版できないのだ。

 その、今まで語ってきたような次第で、「スーパーボーイ」の著作権はシーゲル家に戻ったわけですが。
 で、権利が戻ったからといって、「じゃ、今後『スーパーボーイ』のコミックは、下手をしたらDCコミックス社以外から出ることになるんだ。もしかしたら、マーヴル・コミックス社から出るかも! なんてこった!」……とかいう具合にゃあ、ならないのが世の中のママならぬ所でして。

 なぜなら、「スーパーボーイ」という名前の「商標権」は、DCコミックス社が所持しているのですわ。これが。
 でもって、商標権っつーのは、法律上は、DCコミックス社が「スーパーボーイ」の名前を商業目的で使用し続ける限り、同社が保持してられるんですわ。
 加えて、DCコミックスは、スーパーボーイやスーパーマンの胸についている「Sマーク」の商標権も所持していまして。
 でもって、法律上は、DCコミックスが「Sマーク」を商業目的で使用し続ける限り(以下略)。

 つまりは、「スーパーボーイ」の著作権を所持しているシーゲル家が、彼ら自身の『スーパーボーイ』のコミックを出そうとした場合、ですな。DCコミックス社が上記の商標権を所持している以上、

1.該当のコミックのタイトルに、『スーパーボーイ』を使えない

2.該当のコミックの主人公は、おなじみの「Sマーク」付きのコスチュームを着てはならない

 という、2点を満たしたコミック、要は「スーパーボーイ」としての特徴が、スポイルされたしかモンしか出版できないのですわ。

 ただまぁ、シーゲル家は、多分、彼ら自身で「スーパーボーイ」のコミックを出版する気はないでしょうが。
 余所の会社(まあ、DCコミックス社がその筆頭でしょうが)に、相応の条件・金額で、ライセンスを与える方が、遙かに楽に金を儲けられますから。

 ちなみに、この「著作権を持っていても商標権は他社なので、コミックを出版するのに不都合が生じる」例として代表的なのは、元フォーセット・コミック社の「キャプテン・マーヴル」ですな。
 現在、DCコミックス社は、フォーセット・コミックス版の「キャプテン・マーヴル」の著作権を所持してるわけですが、「キャプテン・マーヴル」の商標権自体は、マーヴル・コミックス社が所持してます。
 故に、DCコミックス社は「キャプテン・マーヴル」の登場するコミックのタイトルに、そのまんま『キャプテン・マーヴル』の名を使用できず、代わりに、『パワー・オブ・シャザム!』といったタイトルで出版しております、と。


▼余談その2:スーパーボーイ(コナー・ケント)が死んだのは、本件と関係がない(と、思う)。

※以降には『インフィナイト・クライシス』のクライマックスに関わるネタバレがあるので注意してくださいな。


 えー、「スーパーボーイの著作権がシーゲル家に戻った」っつー、判決が、ニュースサイトなどで広まったのが2006年3月ですが。
 この時期ってのは、丁度、DCコミックス社の一大クロスオーバー『インフィナイト・クライシス』がクライマックスを迎えてた時期でして。

 で、ご存じの方も多いでしょうが、この『インフィナイト・クライシス』本編では、当時のDCコミックスの作品世界における「スーパーボーイ」(コナー・ケント。スーパーマンのクローン人間で、テレキネシスの応用で、スーパーマンに似た超能力を発揮する人)と、「スーパーボーイ・プライム」(平行世界アース・プライム出身。オリジナルの「スーパーボーイ」によく似てるけど、オリジンは全く異なる)が戦い、スーパーボーイ(コナー・ケント)の方が死亡する、と言う展開がありまして。

 でー、この展開と、裁判の判決を結びつけて、
「『インフィナイト・クライシス』のストーリー中で、スーパーボーイ(コナー)が死んだのは、シーゲル家の元にスーパーボーイの著作権が戻ったあおりで、DCコミックス社が、スーパーボーイを処分することを決めたから」
 などといったことを指摘するファンもおりましたが。
(あと、『インフィナイト・クライシス』のラストで、スーパーボーイ・プライムが、DCユニバースから隔離・封印される、ってオチは、スーパーボーイがDCコミックスの手を離れた、っつーのを暗示している、とか)

 個人的には、この説は、根拠や必然性に乏しく、まぁ、ブッチャケ、「偶然の一致」だと思います。

 理由としては、まず、

1.『インフィナイト・クライシス』第6号(スーパーボーイが死ぬ回)、第7号(最終回。スーパーボーイ・プライムが封印される回)は、確か2006年3月&4月頃に発売されている。

2.コミック雑誌の進行を考えるに、例の判決が下った2006年3月23日の時点で、『インフィナイト・クライシス』第6&7号のシナリオは、既に完成していたと思われる。

 故に、「タイミング的に“例の判決”を、作中に反映させることは、無理くさい」と。

 っつーか、仮に、その辺のシナリオが改変可能な時期に、「著作権が元に戻ったよ」ってなニュースが飛び込んできた、と、してもですよ。『インフィナイト・クライシス』みてぇな、数年がかりで積み重ねてきた、20年に1度のイベントのオチを、今さっき飛び込んできたニュース、しかも会社的にデリケートなニュースを、シナリオに盛り込もう、とか、考える編集者がいると思いますかね? 俺は、思わないが、どうか。


 あと、シーゲル家が所持する「スーパーボーイ」の権利に、スーパーボーイ(コナー)が抵触してるから殺した、ってのが、どうもね。
 別に、殺すことは無いのに。

 その、
1.シーゲル家が所持している「スーパーボーイ」の権利は、あくまで「子供時代のクラーク・ケント」が主人公の物語とその派生物であり、「スーパーマンのクローン人間」であるスーパーボーイ/コナー・ケントは、上記の著作権には含まれない(=シーゲル家にオリジナルのスーパーボーイの権利が移ったからと言って、スーパーボーイ/コナーの権利まで、シーゲル家に移るわけではない<当たり前ですが、念のため)。

2.一方で、「スーパーボーイ(コナー)はオリジナルのスーパーボーイをパクっていて、実に著作権侵害です」とか、指摘される可能性もあるが、これについては、コナーの能力やコードネームを変えるなどすれば、コナー・ケントを、シーゲル家の保持する著作権とは関係のないものにすることもできた。

3.で、オリジナル・スーパーボーイの著作権侵害を回避するための手段は“殺す”以外にいくらでもあったのに、スーパーボーイは死んだ、ということは、むしろ、スーパーボーイ(コナー)は、シーゲル家に著作権が戻ったこととは、関係なく死なされたんじゃねぇのか? って、オイラは思うが、どうか。

 まぁ、微妙に、説得力ないですが。


 つかまぁ、オイラの持ってる『インフィナイト・クライシス』(ハードカバー版)の巻末の解説に、「スーパーボーイが死んだ理由」について書いてあったりするんですが。

 その理由ってのが、こんな感じで。

1.『インフィナイト・クライシス』を統括していたDCの偉い人、ダン・ディディオは、当初は物語のクライマックスで、ナイトウィングを殺すつもりでいた。

2.これに対して、『インフィナイト・クライシス』のライター、ジェフ・ジョーンズを筆頭とするスタッフは、ナイトウィング殺害を断じて拒否。

3.ディディオ「殺したくないなら、ナイトウィングぐらいに、“殺すとインパクトのあるキャラクター”を提案したまえ」

4.「じゃ、スーパーボーイで」と誰かが言った。

5.ジェフ・ジョーンズ、それも嫌がったけど渋々同意。

6.スーパーボーイ、名誉の戦死。

 っつーことらしいですわ。ひどいね、どうも。

 まぁ、上記の経緯は、「全部嘘」で、本当は、「シーゲル家に文句を付けられないよう」スーパーボーイを殺したのかもしれませんが、俺的には、上記の経緯が、実に「もっともらしいし、まぁ、そんなモンだろう」と、思いますわ。

 まぁ、信じたい説を信じればいいんじゃないでしょうか。

 っつーわけで、取りとめも無くなった所で、この話はオシマイ(なんたる適当さだ)。

タグ:アメコミ講座

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